2009-01-01から1年間の記事一覧

第201話「怪談・すすり泣くわら人形」

(脚本 加瀬高之 佐藤肇/監督 佐藤肇/出演 楠侑子 戸浦六宏 室田日出男 夏純子) カゲヤマはお抱えの祈祷師が「この屋敷は呪われている」「悪魔憑きが居る」などと語るのを信じ、戦々恐々としていた。養女カヨが墓地で藁人形に釘を打っている、自分を呪い…

戸川昌子『黄色い吸血鬼』

エラリィ・クイーンに絶賛された表題作など、12篇の恐怖小説を収めた短篇集。 ・「緋の堕胎」違法な堕胎を請けあう医者のもとへ、妊娠七ヶ月の水商売女が来る。早産の処置のあと、病院の二階で休んでいた彼女は、書生が目を離した隙に窓から飛び降りて死んで…

滝田栄『滝田栄、仏像を彫る』

滝田栄が仏教徒として禅に学びインドを訪ね、観音菩薩や阿弥陀如来像を彫るまでの「自分探し」の記録。地味でまじめな役者というイメージしかなかったけど、その素顔は、意外にも胸中に激情を抱えた人だった。彼は舞台に立つ際、観客全員を満足させようと限…

『トランスフォーマー/リベンジ』(阿倍野のアポロシネマ8)

冒頭から古代人大虐殺。都市や大学図書館、エジプトの遺跡さえも問答無用にぶっ壊す。敵との対話(平和路線)を重視するリベラルを嘲笑し、男子オンリーな軍隊をかっこよく描いて賛美するわりに、顔も見えない兵士や戦車がロボットそこのけでおもちゃにされ…

ニーナ・サドゥール「空のかなたの坊や」(「新潮」6月号)

訳者の沼野恭子によれば、ニーナ・サドゥールは「ロシアで最も謎めいた作家」と目され、ゴーゴリの『死せる魂』を下敷きにした戯曲も書いているとのこと。「坊や」も『鼻』『外套』のようなどたばた喜劇だが、それら以上に捉えどころがない奇想と思索に充ち…

ちょっとしたあれこれ・レモンライムミント

・土曜は朝からなんばぱーくすシネマで『チョコレート・ファイター』。 終わってからタイトルの意味に気づいた。マーブルチョコレートって、自分のなかではチョコの範疇に入ってなかったから。〈聖なる障害者〉設定はあざといと思ったが(こういった差異も充…

第200話「殺人者に明日はない」

(脚本 増村保造 加瀬高之/監督 富本壮吉/出演 緑魔子 成田三樹夫 田口計 高橋長英)

第199話「皆殺しの島」

(脚本 南英之/監督 土井茂/出演 小笠原良智 山本麟一 広村芳子 木村元 フランツ・クルーベル 川辺久造 地井武男)

ちょっとしたあれこれ・ゆび編み

・『忍者武芸帳』(日本映画専門ch)。「人々が平等に幸せに生きていけるよう戦わねばならん」とか宣言して終わるんだけど、戸浦六宏が言うと、威圧的でも凄く澄んだ声が高みから降りてくるって感じで、このひととはとても平等つうか対等な存在にはなれんワ……

ファミ劇で『ザ・ガードマン』71年版を連日放送中。

ガードマン末期の特色は、大映京都撮影所で制作された作品が幾つかあること。時代劇の名カメラマン・森田富士郎もクレジットに名を連ねています。音楽は山内正から渡辺岳夫(大塩潤名義)に変更、テーマ曲を軽快にアレンジ。城達也の劇中ナレーションも増え…

戸川昌子『深海怪物の饗宴』

金と女をめぐり暗躍する男たちを描いた官能小説。 あらすじ。大兵産業会長・大場はケーブル省の利権にありつくため局長の池野に近づく。彼の道楽である作詞作曲の成功をはかり、プロの歌手を育てようとする。選ばれたのは大場の秘書・石谷の姪の根々子。彼女…

第198話「怪談・車に乗った幽霊」

(脚本 山浦弘靖 富本壮吉/監督 富本壮吉/出演 根上淳 太田博之 村松英子 文野朋子 益田ひろ子) リュウイチが妻を連れて自慢のスポーツカーでドライブに出かけた帰り道。ふざけて猛スピードで走っていたところ、誤って女中の娘ユキを轢き殺してしまう。だ…

笙野頼子「海底八幡宮」

『おはよう、水晶』の感想でもふれた、笙野頼子「海底八幡宮」(「すばる」2008年10月号)を再読。語り手は金毘羅。身体のなかに巻き貝を抱え、ときに頭から蛇が生える権現。この巻き貝は、横たわり丸まる姿がそっくりな、いまはなき猫の魂かと。つまりは自…

第197話「集団誘拐」

(脚本 藤森明 増村保造/監督 村山新治/出演 平泉征 佐藤博 小松方正 川口敦子 永田靖 目黒幸子)

笙野頼子『おはよう、水晶―おやすみ、水晶』

戦闘的な身辺雑記。 神話や宗教(西哲も…)の知識がないため、「おんたこ」三部作など近年の小説にはわからない部分も多々あったけど(設定の風刺自体は楽しめた)、これは読めた。観念的な私小説の体裁を取りながら、自在に文章を変転させると同時に怒り、…

『血と暴力の国』

・コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』 映画は未見。装飾を殺ぎ落とした息の長い文章が心地よいが、難解。簡潔な表現をつみ重ね、物語も単純なのに、肝心の部分はみえないのがもどかしい。語り手は人物の心理にほとんど踏み入らず、過去を暴くことで行…

『最後の自画像(「駅路」より)』(日本映画専門ch)

脚本・向田邦子。演出・和田勉。このコンビのNHK制作ドラマというと、メヘテルハーネのテーマ音楽が印象的な『阿修羅のごとく』でしょう。向田ドラマのマイベスト。久世なんざ知らんよ、という。『最後の自画像』にも『阿修羅』の四人姉妹のうち、いしだあゆ…

ちょっとしたあれこれ・サイラーの剃り残し

・堂島ロールってほんと人気ありますよね……わたしは長蛇の列に並ぶなんてできない性分なもんで(常に先頭に立ちたいんだよ!……や、短気なだけ)、モモヤのロールケーキで充分ですわ。

『花実のない森』(日本映画専門CH)

原作は松本清張。他にいくらでもあるだろうに、このファム・ファタール物を映画化するあたりはさすが(?)大映。タイトルバックの赤い光線と、鍵穴から覗いたような女の瞳は美しいが、池野成の音楽が怪談映画じみていて笑える。脱衣場で文子さまを押し倒す…

第196話「花嫁の夫は死人」

(脚本 山浦弘靖 富本壮吉/監督 富本壮吉/出演 緑魔子 成田三樹夫 田口計今井健二) 舞台はポルトガル。アキコは婚約者のカミサカをけち臭い、仕事狂いの男とみなして嫌っていた。愛人と共謀し、結婚した後カミサカを殺して60億もの財産を奪おうと企むが、…

第195話「二億円宝石強盗」

(脚本 加瀬高之/監督 土井茂/出演 河野秋武 穂積隆信 川口恵子) イチハラは宝石店「光輪」店員。彼の幼い一人娘・カオリは小児麻痺を患っている。多額の治療費を得るため、イチハラは強盗の侵入を手引きし、分け前に預かろうとする。が、強盗・ミズタニ…

ちょっとしたあれこれ・今日は誕生日

・大台に乗ったからには、でんと構えて生きたいと思うのだけど、もう前もみえないほど低姿勢で、へいこらするのが板についてしまいまして……飼い猫にさえも踏み台にされる毎日ですよ。 ・生年月日(誕生日)データベースより。 http://www.d4.dion.ne.jp/~war…

萩原健一『ショーケン』

いまさら読んだ。昨年話題となったショーケンの自伝。懲りない女遊び、アル中と麻薬中毒、完璧主義的な演技へのこだわりにはただ圧倒されるのみだけど、クロサワ、勝新、倉本ソー、優作、勘三郎らのどこかトチ狂った身ぶりに、注意深く冷めた「視線」を送る…

ちょっとしたあれこれ・待ってくれ、ヨーコ

・休日、カラオケで『シンケンジャー』のOPを歌ってはじめて、「目潰しろ〜」と聞こえていた謎の部分が、実は「レッツ武士道」であることを知って悶絶した。それはそれで「日本のスピリッツ」に目覚めたサムライ的にどーかと思うけどさ……なんとなくそのはっ…

『シャネル 最強ブランドの秘密』&『白い人たち』

山田登世子『シャネル 最強ブランドの秘密』。天才起業家・ココ・シャネルの語録であると同時に、十九世紀の「男性クチュリエによる女のモード」にテロルを敢行し、みごと勝利したその力業と背景を論じる。シャネルは貴族趣味で無個性な金ぴかドレスを嫌悪し…

第194話「死刑執行人の歌が聞こえる」

(脚本 山浦弘靖/監督 宮下泰彦/出演 多々良純 渚まゆみ 高橋昌也 金内吉男 谷口香) 「ワールドレコード」の新人歌手・リリは宣伝の一環として、銀座で流しをやるよう部長に命じられる。するとリリが「殺される」と異常におびえ、泣いて拒むため、部長は…

第193話「葬式強盗団」

(脚本 高久進/監督 阿部毅/出演 千波丈太郎 山形勲 夏圭子 根岸明美) 「権田商事」から現金三億円を盗むべく、権田の秘書、マンションの住人の元坊主と愛人、葬儀屋たちが暗躍する。係累のない画家の卵を殺害し、霊柩車に死体とともに札束を隠して運び出…

芥川比呂志エッセイ選『ハムレット役者』

おやじさんより好きカモー、というわけでメモ。メモという名のお手軽引用並べ。 ・丸谷才一・渡辺保いわく「伝説」化したタイツのおはなし。 ハムレットを演じるにあたり、黒いタイツを穿く必要がある。が、激しく動きまわるたび、腰に帯びた剣の鞘飾りがタ…

『ウォッチメン』(アリオ八尾)

・原作を未読なため充分に筋を追えなかったのが悔しい。でも退屈はしなかった。 とにかく人や物が四散する映画。窓ガラス、火星の「楼閣」、ベトコン、ヒーローが容赦なく飛び散らかす。爽快。また、妊婦を射殺、女を強姦しようとして顔から血が出るまで暴力…

『大いなる幻影』&『時代劇への招待』

・戸川昌子『大いなる幻影』 女装した男の事故死。占領軍少佐の子供の誘拐事件。このふたつの奇怪な出来事が、年老いた女たちが住む「K女子アパート」に、何重にも錯綜した悲劇をもたらす。住人はみな身寄りなく、みじめで猜疑心が強く、頭がおかしい。一見…