ファミ劇で『ザ・ガードマン』71年版を連日放送中。

ガードマン末期の特色は、大映京都撮影所で制作された作品が幾つかあること。時代劇の名カメラマン・森田富士郎もクレジットに名を連ねています。音楽は山内正から渡辺岳夫(大塩潤名義)に変更、テーマ曲を軽快にアレンジ。城達也の劇中ナレーションも増えます。そして初参加となる監督・脚本家・俳優がそれぞれの持ち味を生かし、より荒唐無稽でバラエティ色豊かなドラマに仕立てたこと。監督では、なんといっても深作欣二の参戦。第326話「年上の妻の華やかな犯罪」は、女の一途な愛情が世間的・母性的懐柔をも踏み越える傑作。自分を裏切った男をひとり庇う高千穂ひずるが怖いほど神々しい。脚本は池田雄一。同僚の罠にはまり出世の道を断たれた男の復讐劇、第249話「悪党サラリーマン」もすばらしかった……エリートサラリーマンの脱落は、高度経済成長期に放送されたこのドラマにおける切実な主題。城みちる似の主人公に共感し、女まで寝取った早川保に殺意を抱いた男性も多いはず。余談ですが、池田氏が担当したGメンの真山知子ゲスト回は、ガードマンを髣髴とさせるどんでん返しが相次ぐ痛快なサスペンスでした。
深作の他に、斬新な演出が売りの井上昭。春日太一の新書『時代劇は死なず――京都太秦の職人たち』によれば、永田雅一の放漫経営によって会社はジリ貧状態となり、映画制作にかけるコストも限りなく切りつめられる。結果『座頭市』『悪名』『眠狂四郎』など、安定した収益がみこめる人気シリーズに頼らざるをえず、マンネリ化に悩み質は低下する一方。これに不満をもった井上氏は、周囲の疑問を押しのけてテレビに新天地を求め、ガードマンを演出することになったそうで。彼の優れた手腕は第321話「結婚式から逃げた花嫁」、加賀まりこ客演の外国ロケ編、第333話「フランスで死んだ女」でもみられます。あと、瀬川昌治フランキー堺と組んで殺伐としたコメディを撮っています。第331話「ドッキリ喜劇・ヌード売ります!」は、女のかつらが外れるとなぜか坊主頭、なんて小ネタをちりばめ、恒例の真犯人(共犯者)バレも呆れるほどの強引さ。
脚本について。70年は山浦弘靖ひとりに偏りがちでしたが、大映倒産寸前というあおりをくらい吹っ切れざるをえなくなったのか、増村保造も再び活躍。最終回の脚本も当然増村(藤森明と共同)。個人的には清水啓司が絡んだ話もおすすめ。新参・今子正義と小山内美江子も奮闘しています。今子は第344話「煙突の上で無理心中したヌードの美女」と第348話「今晩ワ!私は死のセールスマン」を、小山内は第347話「すごーい奥さんの飛行機爆破作戦」をと、最終回間近とは思えない、ナンセンスを極め、高揚をみなぎらせた話を書いています。第348話の悪党サラリーマンによる銃撃戦、第347話の石油タンクへの無差別テロも凄いですが、第344話こそガードマン屈指の怪作。清水は薬物による幻覚に苛まれ、廃墟をさまよう。荒木はヒッピー村に潜入するため(ひとさまの表現を借りますが)、あっとおどろくタメゴローのような扮装でバイクを駆る。本来なら、いちばん年若い杉井君に行かせればよさそうなものですが、松竹ぬーべるヴぁーぐの不良青年でならした川津祐介なら、ヒッピーやヌーディスト集団、アングラ舞踏のみなさん、モップスのライブの聴衆に混じっても違和感ないだろうという、わかるようなわからんような配慮ゆえでしょうか。のりのりで演じている様子が不気味。反体制を標榜しながら女をヤク中にして従わせ、追いつめられると金を持ち逃げして煙突に登る天本英世、そしてヌーディストに負けじと肌色のタイツに身を包んだ緑魔子さんも必見です。
ジェリー藤尾中原早苗今井健二といった常連に加え、新たに登場する俳優で目だつのは、津川雅彦吉田輝雄三益愛子加賀まりこ芦屋雁之助、悠木千帆、最終回の池部良関根恵子三益愛子は第338話「負けられないわ!嫁と姑 女の戦争」で実子の川口恒と共演、劇中でも母子の役で、たっぷりと馬鹿息子を溺愛します。関根恵子は、第335話「16歳で結婚!女はつらいネ」と最終回二部作で下着、水着姿を披露。番組があと一年続いていれば、もっと不条理に脱がされていたんでしょうね……関係ないけど、大映末期スターの松坂慶子やシノサブあたりも出ていたかも。『シークレット部隊』のレギュラー、三浦友和は確定でしょうが。白黒時代に少し顔を出していた岸田森さん、露口茂も再登板。森さんはいつもの森さん。退色したフィルムであろうと、呪われた血族らしい青白い肌は冴えわたっています。第328話「セックス解放の海!真夏の殺人」の、真夏なのにトレンチコートを着た荒木との対決には痺れました。脇の悪役では、まだ物騒なころの石橋蓮司蟹江敬三。蟹江は増村監督作『遊び』のやくざ同様、申し分ないエキセントリックな役柄。この豪華な面子をひきたてるためか、ガードマン側の、人間味をさらけだすような個々の活躍がほとんどなくなってしまうのは、致し方ないとはいえ残念です。それでも最終回、藤巻潤の歌を流すサービスは忘れないのがニクい。民間企業らしく(?)閉店をつげる「蛍の光」に乗せて、ガードマン全員が雪ふる聖夜の街を去るラストにはただ涙……榊さんだけ別撮りですけど。
他の長期ドラマ末期の迷走をまのあたりにすると、ガードマンは路線変更を経ながらも、常にパターン内におさめて一定の水準を保ち、時には異様にはじけた話を挟みながら奇麗に完結できたと思うので、ほんと幸運な作品だなあと……ついでに。全話はだめでも、71年版だけはDVD化して欲しかったんですけどねえ……あとのまつり。