『タデ食う虫と作家の眼』『憑かれし者ども』他

愛のイエントル作者: アイザック B.シンガー,邦高忠二出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1984/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見るタデ食う虫と作家の眼―武田泰淳の映画バラエティ・ブック作者: 武田泰淳出版社/メーカー: 清流出版発売日: 20…

『活発な暗闇』他

読書メモ。仕切りなおし。活発な暗闇作者: 江國香織出版社/メーカー: いそっぷ社発売日: 2003/04メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 7回この商品を含むブログ (18件) を見るちいさなちいさな王様作者: アクセルハッケ,ミヒャエルゾーヴァ,Axel Hacke,Micha…

『海鼠の日』『わが子キリスト』他

たくみと恋 (岩波文庫 赤 410-0)作者: シラア,実吉捷郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/03メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る不運な女作者: リチャード・ブローティガン,藤本和子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/09/29メディア: …

シークリット・ヌーネス『ミッツ ヴァージニア・ウルフのマーモセット』

いまや、ピンカの毛に秘められた魅力は蚤だけではなくなった。読者の皆さんは覚えているだろう。ミッツは寒がりだった。彼女はほどなく家中で一番暖かいところを見つけた。普段より寒く湿気の多い夜は――イギリスの夏には、寒くて湿気の多い夜がよくある――、…

『灯台守の話』『神の息に吹かれる羽根』他

読書めるも。ゆきこんこん物語作者: さねとうあきら,井上洋介出版社/メーカー: 理論社発売日: 2006/01メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (2件) を見る女の足指と電話機―回想の女優たち作者: 虫明亜呂無出版社/メーカー: 清流出版発売日: …

いとうせいこう+奥泉光「文芸漫談」シーズン3番外編「傑作小説を笑う 夏目漱石『三四郎』」

昨日、大阪府松原市文化会館で行われた文芸漫談を観て来ました。ナマ蝶ネクタイいいね。 いとうせいこうは意外に精悍でスリムなスタイル。奥泉先生もとても53歳とは思えない、背広に着られた感あるガリ勉坊や風味な愛嬌をふりまいておりました。前段のお喋り…

『品格と色気と哀愁と』『人間豹』他

最近読んだ本をメモ。 余裕ないので手短に。ジェイン・オースティン料理読本作者: マギーブラック,ディアドレル・フェイ,Maggie Black,Deirdre Le Faye,中尾真理出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1998/03/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見…

アイザック・バシェビス・シンガー『よろこびの日―ワルシャワの少年時代―』

ほとんど知られていないけれども、喜劇も悲劇もともに豊富なある世界のありさまをつぶさに見てもらうのがわたしの念願です。それは知恵とおろかさ、激しさと優しさに満ちた特色ある小世界なのです。 I・B・シンガーはポーランド生まれのユダヤ人。第二次世界…

『ニュー・ゴシック ポーの末裔たち』

twitterはやめちまいましたが、ブログ更新はぽつぽつ続けます。 鈴木晶・森田義信編訳『ニュー・ゴシック ポーの末裔たち』読了。 編訳者あとがきを要約すると。ミニマリズム(ニューリアリズム)は、自分の目に見える範囲の日常だけをこと細かに写生する。…

鹿島田真希「万華鏡スケッチ」

『ピカルディーの三度』におさめられた短篇。初出は「en-taxi」2004年第05号。『一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する』刊行後、しばらく沈黙していた鹿島田さんがこの小説を発表したときは、内容の素晴らしさと相まって感激しました。同年「新潮」に『白バ…

対談「戦後文学2009」高橋源一郎+奥泉光(「群像」8月号)

本当にメモだけ。当代随一の書き手であり読みの巧者でもあるお二方が日本文学とひとくちでいえども漱石太宰村上だけじゃないよ他にも豊饒な土壌があるよと説くシリーズの前夜対談。 後半は楽屋トークみたいなものなので省略。 ・企画の理由 奥泉 ぼくが戦後…

『モーパッサン短編集(一)』

作者の故郷ノルマンディなど田舎を舞台にしたコント集。 詩情豊かな自然や過ぎた愛の哀しみを描きながらもどこか冷めたユーモアをこめる。また田舎者の純朴さを手放しで持ちあげたりせず、性暴力や動物虐待といった獣性も遺憾なく暴きだす。 「田舎娘のはな…

津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』

主人公の大学生「ホリガイ」の造形が良い。四年間勉強とバイトに励み、いち早く地元の役所に就職できた優秀さをひけらかしもせず、かえって台無しにする駄目な部分を持ちあわせている。下宿は散らかし放題で、自分のブラジャーの金具を踏んで悲鳴をあげる。…

西条八十『人食いバラ』

毛糸玉売りのみなしご英子がひょんなことから大金持ちの元男爵の後継ぎとなる。会ったばかりの老い先短い元男爵から全財産を譲ると言われ困惑する英子。彼には姪の春美という美少女が居たが、春美は浪費家なうえ「おそろしい病気」に罹っているため後継ぎに…

タニス・リー『悪魔の薔薇』

「現代のシェヘラザード姫」の異名をとるタニス・リーの短篇集。 「別離」。吸血鬼は普通、不老不死の身体を持つ妖美な怪物として表現されがちだが、この小説に登場する女吸血鬼は、全ての生き物と同じく醜く年を取る。さる高名な吸血鬼と違い、人間を襲うこ…

戸川昌子『黄色い吸血鬼』

エラリィ・クイーンに絶賛された表題作など、12篇の恐怖小説を収めた短篇集。 ・「緋の堕胎」違法な堕胎を請けあう医者のもとへ、妊娠七ヶ月の水商売女が来る。早産の処置のあと、病院の二階で休んでいた彼女は、書生が目を離した隙に窓から飛び降りて死んで…

滝田栄『滝田栄、仏像を彫る』

滝田栄が仏教徒として禅に学びインドを訪ね、観音菩薩や阿弥陀如来像を彫るまでの「自分探し」の記録。地味でまじめな役者というイメージしかなかったけど、その素顔は、意外にも胸中に激情を抱えた人だった。彼は舞台に立つ際、観客全員を満足させようと限…

ニーナ・サドゥール「空のかなたの坊や」(「新潮」6月号)

訳者の沼野恭子によれば、ニーナ・サドゥールは「ロシアで最も謎めいた作家」と目され、ゴーゴリの『死せる魂』を下敷きにした戯曲も書いているとのこと。「坊や」も『鼻』『外套』のようなどたばた喜劇だが、それら以上に捉えどころがない奇想と思索に充ち…

戸川昌子『深海怪物の饗宴』

金と女をめぐり暗躍する男たちを描いた官能小説。 あらすじ。大兵産業会長・大場はケーブル省の利権にありつくため局長の池野に近づく。彼の道楽である作詞作曲の成功をはかり、プロの歌手を育てようとする。選ばれたのは大場の秘書・石谷の姪の根々子。彼女…

笙野頼子「海底八幡宮」

『おはよう、水晶』の感想でもふれた、笙野頼子「海底八幡宮」(「すばる」2008年10月号)を再読。語り手は金毘羅。身体のなかに巻き貝を抱え、ときに頭から蛇が生える権現。この巻き貝は、横たわり丸まる姿がそっくりな、いまはなき猫の魂かと。つまりは自…

笙野頼子『おはよう、水晶―おやすみ、水晶』

戦闘的な身辺雑記。 神話や宗教(西哲も…)の知識がないため、「おんたこ」三部作など近年の小説にはわからない部分も多々あったけど(設定の風刺自体は楽しめた)、これは読めた。観念的な私小説の体裁を取りながら、自在に文章を変転させると同時に怒り、…

『血と暴力の国』

・コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』 映画は未見。装飾を殺ぎ落とした息の長い文章が心地よいが、難解。簡潔な表現をつみ重ね、物語も単純なのに、肝心の部分はみえないのがもどかしい。語り手は人物の心理にほとんど踏み入らず、過去を暴くことで行…

萩原健一『ショーケン』

いまさら読んだ。昨年話題となったショーケンの自伝。懲りない女遊び、アル中と麻薬中毒、完璧主義的な演技へのこだわりにはただ圧倒されるのみだけど、クロサワ、勝新、倉本ソー、優作、勘三郎らのどこかトチ狂った身ぶりに、注意深く冷めた「視線」を送る…

ちょっとしたあれこれ・待ってくれ、ヨーコ

・休日、カラオケで『シンケンジャー』のOPを歌ってはじめて、「目潰しろ〜」と聞こえていた謎の部分が、実は「レッツ武士道」であることを知って悶絶した。それはそれで「日本のスピリッツ」に目覚めたサムライ的にどーかと思うけどさ……なんとなくそのはっ…

『シャネル 最強ブランドの秘密』&『白い人たち』

山田登世子『シャネル 最強ブランドの秘密』。天才起業家・ココ・シャネルの語録であると同時に、十九世紀の「男性クチュリエによる女のモード」にテロルを敢行し、みごと勝利したその力業と背景を論じる。シャネルは貴族趣味で無個性な金ぴかドレスを嫌悪し…

芥川比呂志エッセイ選『ハムレット役者』

おやじさんより好きカモー、というわけでメモ。メモという名のお手軽引用並べ。 ・丸谷才一・渡辺保いわく「伝説」化したタイツのおはなし。 ハムレットを演じるにあたり、黒いタイツを穿く必要がある。が、激しく動きまわるたび、腰に帯びた剣の鞘飾りがタ…

『大いなる幻影』&『時代劇への招待』

・戸川昌子『大いなる幻影』 女装した男の事故死。占領軍少佐の子供の誘拐事件。このふたつの奇怪な出来事が、年老いた女たちが住む「K女子アパート」に、何重にも錯綜した悲劇をもたらす。住人はみな身寄りなく、みじめで猜疑心が強く、頭がおかしい。一見…

プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』他

片岡義男『吉永小百合の映画』 ティエリー・ジョンケ『蜘蛛の微笑 (ハヤカワ・ミステリ文庫)』 笙野頼子『パラダイス・フラッツ』 プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』 『吉永小百合の映画』。デビュー作『朝を呼ぶ口笛』から『キューポラのある街』までを論じる…

『家族の終わりに』と『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』

誰が書いていたかは忘れたけど、アメリカの小説には、夫婦間の不和を扱った小説が多いとか。 リチャード・イエーツ『家族の終わりに』もそのひとつ。 主人公は、オフィスマシンを売るサラリーマンの夫と、女優志望だった過去をもつ専業主婦の妻。丘の上の小…

続・野間文芸新人賞受賞記念対談「弱さに寄り添う音楽と小説」

松浦理英子さんと津村記久子さんの対談の続き。既存のアクション大作路線とは異なる、人間ドラマ重視のアメリカ映画では、「弱いというか煮え切らない男の人」を描くことが主流になって来ている。なかでも『ゴーストワールド』が好き。 松浦 『ミュージック…