『風船』(1956)

森雅之は写真工業会社の社長。若い頃は天才画家と持て囃されたが、金のために絵を描くことを嫌い、筆を捨て逆に実業界へ転じた。今では高台の豪邸に妻と二人の子供と暮らしている。娘の芦川いづみは、小児麻痺のせいで身体が不自由だが天真爛漫な少女。世間…

『猫と庄造と二人のをんな』(1959)

芦屋で荒物屋をいとなむ森繁久彌は大の猫好き。「リリー」と名づけた飼い猫を、四年連れ添って別れた妻(山田五十鈴)や、再婚した妻(香川京子)よりも愛している。だが山田の申し出により、彼女にリリーを譲ることに。山田は森繁の母親(浪花千栄子)が香…

『雁の寺』(1962)

2月のチャンネルNECOでは、「【特集】女優・若尾文子×監督・川島雄三」と題して、『女は二度生まれる』『しとやかな獣』『雁の寺』を放送していました。そのなかから川島監督らしさ、といってもわたしは有名な作品しか知らないのですが、「ちょっと狂騒的な…

『下女』(1960)

九条シネ・ヌーヴォで。ほうぼうで絶賛されているのを真に受けて、どれほど壊れた映画かと期待していたけれど案外、端正な映画でした。あれを端正と言いきる自分の感性がおかしいだけかも。物語は陳腐とさえいえる家庭崩壊劇ですが、登場人物たちの心がすさ…

『タデ食う虫と作家の眼』『憑かれし者ども』他

愛のイエントル作者: アイザック B.シンガー,邦高忠二出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1984/04メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見るタデ食う虫と作家の眼―武田泰淳の映画バラエティ・ブック作者: 武田泰淳出版社/メーカー: 清流出版発売日: 20…

『アバター』(2009)

なんばパークスシネマで。映画体験に吐き気や頭痛は要らない。快楽だけが欲しい。物語がどれほどグロテスクで陰惨でも人の不幸は蜜の味、暗い快楽が生じるけれど形式というか、視界&体感責めで来られると歯が立たない。慣れると大丈夫とは聞いたけど、よほ…

『活発な暗闇』他

読書メモ。仕切りなおし。活発な暗闇作者: 江國香織出版社/メーカー: いそっぷ社発売日: 2003/04メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 7回この商品を含むブログ (18件) を見るちいさなちいさな王様作者: アクセルハッケ,ミヒャエルゾーヴァ,Axel Hacke,Micha…

『ある日わたしは』(1959)

(監督 岡本喜八/脚本 岡田達門 井手俊郎) 新年はじめの映画感想。いつもながらやりくり下手なもので、映画館に行く機会が少ないため旧作に偏りがちですが、よろしくおつきあいのほどを。 日本映画専門チャンネルでは現在「―映画のすべて、ここにあり―娯楽…

『海鼠の日』『わが子キリスト』他

たくみと恋 (岩波文庫 赤 410-0)作者: シラア,実吉捷郎出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/03メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る不運な女作者: リチャード・ブローティガン,藤本和子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/09/29メディア: …

『カールじいさんの空飛ぶ家』

『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009) アポロシネマ8で。本編前の『トイ・ストーリー3』の宣伝でもう胸が熱くなった。短篇「晴れときどきくもり」の汚れ仕事(?)を引き受けた者同士の友情、無声映画風に綴られるカール爺さん夫婦の回想、秘境に家を不法…

シークリット・ヌーネス『ミッツ ヴァージニア・ウルフのマーモセット』

いまや、ピンカの毛に秘められた魅力は蚤だけではなくなった。読者の皆さんは覚えているだろう。ミッツは寒がりだった。彼女はほどなく家中で一番暖かいところを見つけた。普段より寒く湿気の多い夜は――イギリスの夏には、寒くて湿気の多い夜がよくある――、…

今年最後の更新

来年こそは魔の山に挑みたいもんです。

『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』

テアトル梅田で。つっこみどころはヲタ同士のお喋りで言いつくしたので最小限にとどめたい。でもやっぱりキングとウルトラの母の声優の演技は酷かったと声を大にして言いたい。小泉純一郎のメロウな囁きは気色悪いし長谷川理恵はなぜ起用したと詰め寄りたい…

『仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド MOVIE大戦2010』

梅田ブルク7で。ワンピ客の波に呑まれながらもなんとか初日に鑑賞。不完全燃焼な夏の映画よりは楽しめた。イイ科白だけ残してさっさと退場したGACKTと違い吉川晃司がスカルに変身して戦う場面もあるし。翔太郎と別世界のおやっさんとの「再会」は素直に感動…

『灯台守の話』『神の息に吹かれる羽根』他

読書めるも。ゆきこんこん物語作者: さねとうあきら,井上洋介出版社/メーカー: 理論社発売日: 2006/01メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (2件) を見る女の足指と電話機―回想の女優たち作者: 虫明亜呂無出版社/メーカー: 清流出版発売日: …

『指』(1982年)

(原作 松本清張/脚本 八木柊一郎/監督 出目昌伸) 「火曜サスペンス劇場」史上最高視聴率を獲得した作品。 名取裕子は偶然知りあった松尾嘉代と恋に落ちる。二人は松尾のマンションで逢引を重ねる。だが名取は次第に松尾を疎ましく思うようになりある晩首…

いとうせいこう+奥泉光「文芸漫談」シーズン3番外編「傑作小説を笑う 夏目漱石『三四郎』」

昨日、大阪府松原市文化会館で行われた文芸漫談を観て来ました。ナマ蝶ネクタイいいね。 いとうせいこうは意外に精悍でスリムなスタイル。奥泉先生もとても53歳とは思えない、背広に着られた感あるガリ勉坊や風味な愛嬌をふりまいておりました。前段のお喋り…

『わるいやつら』(1985年)

(原作 松本清張/脚本 大野靖子/監督 山根成之) 女たらしの病院長・古谷一行は、名取裕子と結婚するために悪事を重ねるが…。「霧企画」制作による「火曜サスペンス劇場」作品。ナイトクラブで「聖母たちのララバイ」のピアノ演奏が流れる内輪ネタあり。加…

『品格と色気と哀愁と』『人間豹』他

最近読んだ本をメモ。 余裕ないので手短に。ジェイン・オースティン料理読本作者: マギーブラック,ディアドレル・フェイ,Maggie Black,Deirdre Le Faye,中尾真理出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1998/03/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見…

アイザック・バシェビス・シンガー『よろこびの日―ワルシャワの少年時代―』

ほとんど知られていないけれども、喜劇も悲劇もともに豊富なある世界のありさまをつぶさに見てもらうのがわたしの念願です。それは知恵とおろかさ、激しさと優しさに満ちた特色ある小世界なのです。 I・B・シンガーはポーランド生まれのユダヤ人。第二次世界…

『ニュー・ゴシック ポーの末裔たち』

twitterはやめちまいましたが、ブログ更新はぽつぽつ続けます。 鈴木晶・森田義信編訳『ニュー・ゴシック ポーの末裔たち』読了。 編訳者あとがきを要約すると。ミニマリズム(ニューリアリズム)は、自分の目に見える範囲の日常だけをこと細かに写生する。…

第217話「教育ママ殺人事件」

(脚本 増村保造/監督 富本壮吉/出演者 原知佐子 加藤治子 名古屋章 長谷川哲夫 堀井永子 小笠原良智 篠田三郎) 唐突ですが再開。今後も好きな回だけ感想を書きます。 「永和金属」社員寮。原知佐子の夢は息子を私立の名門「メイカ大学」付属小学校に入学…

『風の視線』(1963年)

原作は「女性自身」に掲載された松本清張の同名小説。媒体を意識してかミステリ要素は控えめで、代わりに昼ドラじみた複雑な恋愛模様が展開します。 園井啓介は岩下志麻と結婚したばかりなのに新珠三千代に迫る。新珠は園井の気持ちを理解した上で岩下を押し…

鹿島田真希「万華鏡スケッチ」

『ピカルディーの三度』におさめられた短篇。初出は「en-taxi」2004年第05号。『一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する』刊行後、しばらく沈黙していた鹿島田さんがこの小説を発表したときは、内容の素晴らしさと相まって感激しました。同年「新潮」に『白バ…

対談「戦後文学2009」高橋源一郎+奥泉光(「群像」8月号)

本当にメモだけ。当代随一の書き手であり読みの巧者でもあるお二方が日本文学とひとくちでいえども漱石太宰村上だけじゃないよ他にも豊饒な土壌があるよと説くシリーズの前夜対談。 後半は楽屋トークみたいなものなので省略。 ・企画の理由 奥泉 ぼくが戦後…

『モーパッサン短編集(一)』

作者の故郷ノルマンディなど田舎を舞台にしたコント集。 詩情豊かな自然や過ぎた愛の哀しみを描きながらもどこか冷めたユーモアをこめる。また田舎者の純朴さを手放しで持ちあげたりせず、性暴力や動物虐待といった獣性も遺憾なく暴きだす。 「田舎娘のはな…

津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』

主人公の大学生「ホリガイ」の造形が良い。四年間勉強とバイトに励み、いち早く地元の役所に就職できた優秀さをひけらかしもせず、かえって台無しにする駄目な部分を持ちあわせている。下宿は散らかし放題で、自分のブラジャーの金具を踏んで悲鳴をあげる。…

「蔵の中」(ホームドラマCH)

津村節子原作。美容師の太地喜和子が昔起きた妖しい悲劇を回想する。母親(太地の二役)が田舎の金持ち(佐藤慶)の家政婦兼愛人となり、広大な屋敷で三人仲よく暮らすことに。だが佐藤慶には認知症の妻が居た。妻は食糧をたくわえた蔵の中に閉じこもり、藁…

『夏の妹』(日本映画専門CH)

死者が集う法事を垣間見たような楽しさがあって好き。爺さん二人が海に落っこちようがどうせ死んでいるのだから死なんだろうなと。いつもは厳しい面の大島組の皆さんが朗らかに飲んだくれ、歌をうたい他愛もないお喋りに耽る光景に凄く安心する。父親役は小…

ちょっとしたあれこれ・またぎ男

土曜、南港の古書市へ。『プラネタリウム』『夢魔』『ラモーの甥』『人形たちの夜』『海と薔薇と猫と』とウルトラシリーズのムックを購入。掘り出しものを見つける気概とか全然なくて平凡なセレクトの割に高くついた。日曜は天王寺のABCクラフトをうろちょろ…