第197話「集団誘拐」

(脚本 藤森明 増村保造/監督 村山新治/出演 平泉征 佐藤博 小松方正 川口敦子 永田靖 目黒幸子
高倉キャップが運転する「理想学園」のスクールバスが乗っ取られる。犯人は拳銃を持った二人の男。目的は大会社社長・オオイシの息子の誘拐。犯人の一人、キタイは父親がオオイシに騙されて会社を潰され、母親や弟らとともに一家心中したことを恨み、オオイシを殺そうと企んでいた。バスを倉庫の中に閉じこめてダイナマイトを仕掛け、オオイシに電話すると五千万円を要求。キャップは抵抗を試みるが、子供たちや母親を人質にとられて詰め寄れない。キタイはオオイシが来ると大金を燃やし、刃物で彼の顔を切りつける。そこへ事件に気づいた清水たちが駆けつけ、怒ったキタイがダイナマイトを爆破させるが……てな話。

・バスジャック物とはいえ、後年頻出するような痛快なカーアクションはなく、倉庫での密室劇に終始しています。キタイが復讐のため、オオイシを虐める場面は刃物で顔を切り裂く程度で、くどいほど執拗な暴力描写に長けた増村が脚本に絡んでいる割には、あっさりしているなあと。子供の母親がキャップを「役立たず」呼ばわりし、犯人に拳銃を返そうとするエピソードは、人間の意外な一面を暴くことを肝とする密室劇ならではのもの。でも高倉キャップは荒木や清水と違い、いくら言葉責めにあっても磐石に構えていて、職務を離れて心揺るがす様子がまるでないのが面白みに欠けるというか。
・キタイ役に佐藤博。子役時代の水谷が主演したドラマ、『バンパイヤ』では間久部緑郎を演じています。ちょっとオキマサを思わせる酷薄な風貌にサングラスが似合う。世間的には評判良いが裏では詐欺恐喝、横領未遂など悪事に手を染め、恨みを持たれる社長に小松方正。キタイの不良仲間には平泉征。貧しい境遇を嫌い子供さえ妬む、頭の悪い獰猛な青年。まだ芸人に物まねされる前の、甲高いが無個性な声がなんだかおかしい。細身な皮ジャン姿がいかしてます。