『トランスフォーマー/リベンジ』(阿倍野のアポロシネマ8)

冒頭から古代人大虐殺。都市や大学図書館、エジプトの遺跡さえも問答無用にぶっ壊す。敵との対話(平和路線)を重視するリベラルを嘲笑し、男子オンリーな軍隊をかっこよく描いて賛美するわりに、顔も見えない兵士や戦車がロボットそこのけでおもちゃにされ、豪快にぽんぽん弾け飛ぶ。子供がレゴ人形を放り投げて遊んでいるかのような人命の激安感が全編に漂う。これが、金属片をかき集めたようなロボットたちの個体識別が難しく、場面転換もめまぐるしい、しっちゃかめっちゃかな戦争映画に驚くほどマッチしている。人類が滅びるか否かの混迷のなか、無名の人々に対する思いやりなんぞ抱く義理もない、せいぜいおもしろおかしく犠牲になれや、という割りきりが嫌でも見てとれる。そのうえで主人公たち(と味方ロボット)側のドラマは恋愛、家族愛、友情、自己犠牲などいつもの素材を用い、阿呆でもわかるように簡潔に仕上げてある。
ギャグもお下劣。「もてない男」ネタも健在。主人公の仲間はハッキングで学生寮を美女だらけにする。部屋の壁には『バッドボーイズ2バッド』『クローバーフィールド』のポスター、それにやっぱり美女の写真だらけ。ヒロインは仕事の最中でもホットパンツを穿いた尻を持ちあげ、無駄にビッチなお色気をふりまく。敵の刺客は主人公の抜けきれない童貞根性に目をつけ、金髪美女に化けてセックスを強要する。飼い犬は家族の眼前で交尾をはじめ、母親は薬物で錯乱し息子を辱める。ジョン・タトゥーロ演じる元捜査官は、マザコンの肉屋に落ちぶれたばかりか、前作に引きつづきパンツ姿を披露する(しかも尻の露出が多めでえぐい)。でももっとも笑えるのは、主人公とヒロインが喋っているときまで、無意味にぐるんぐるん回るカメラだろう。場を安定させない、間延びさせないことを目指しているのか知らんが、これ以上しっちゃかさせてどうすんのって。
あれこれ不満はあるが、『スタトレ』みたいな端正なSFより心ひかれもするんだよな……メガトロンとスタースクリームのかけあいが増えたのがちょっとした救い。