第194話「死刑執行人の歌が聞こえる」

(脚本 山浦弘靖/監督 宮下泰彦/出演 多々良純 渚まゆみ 高橋昌也 金内吉男 谷口香)
「ワールドレコード」の新人歌手・リリは宣伝の一環として、銀座で流しをやるよう部長に命じられる。するとリリが「殺される」と異常におびえ、泣いて拒むため、部長はボディガードをつけると提案。しかも、一緒に流しに扮しても違和感のない者、「声もよし、ムードもよし、前から歌手にしたかった」という理由で清水を抜擢。清水は一切躊躇せず「かわいいお嬢さんを守ります」と自信をもって引き受ける。
リリは、以前働いていたバーで新曲を披露することに。が、照明が消えたとたん、何者かに胸を刺されて殺されてしまう。清水は責任を問われてクビになるが、リリの仇を討つべく、再び流しの歌手になりすまして捜査開始。
清水はリリが住んでいたマンションに居据わり、バーが怪しいと睨んで探りを入れるうちに、やくざどもに何度も襲われ、暴行を受ける。そのたび、バーテンダーに扮した荒木に助けられる。リリの友達のホステスに接近するも、彼女はマンションで縊れ死んでしまう。清水は、二人の女の弔い合戦に闘志を燃やすがふと、リリが死ぬ直前にくれた歌謡手帖を思いだす。それは一部の歌詞を書き換えることで、麻薬の取り引き現場を示した、重要な証拠品だった。
荒木が正体を見破られ、晴海埠頭に拉致される。清水は手帖を持って救出に向かい、麻薬組織のボスである第三国人と対決する。組織は香港から輸入した爆竹に、何百億もの麻薬を隠して運んでいたのだ。清水は拳銃を持った悪党ども相手に孤軍奮闘。荒木を助け、高倉キャップたちの加勢に力を得て、みごと勝利を収める。
事件解決後。聖夜のナイトクラブ。ガードマンたちは包帯や絆創膏で飾った、みっともない顔を互いに笑いながら祝杯をあげる。すると清水が神妙な顔をして立ちあがり、リリの死を悼むべく、歌を捧げるのだった……てな話。

・清水のご自慢の美声を心ゆくまで堪能できる回。伸びきった鼻の下と菱形にひらいた口もとがまた、歌い手じしんの高揚や自己陶酔を表しているようで、くすぐったいものがありますが、まあぐずぐずいわず、その官能美に共鳴するのが吉でして。
・清水と荒木の共闘がみられるのも貴重。今後(1969、70年と)いっそう、荒木の出演回数が減ってしまうし、一緒に組んで行動すること自体、シリーズ通してもホント数えるほどしかないので……。荒木ファンとしては、店の裏で楽しそうに小芝居を演じたり、やくざに襲われた清水を助けるとき、顔に銀行ギャングみたいなスカーフを巻いていたのがツボ。あと船上での逆さ釣りも。前回のダストシュートに監禁された杉井君といい、ガードマンの強靭な生命力(と悪運)には感嘆するばかり。
·管理人の爺さん(多々良純)が上着を脱ぐと中国服を着ており、第三国人を自称する。山浦脚本らしい(?)突飛な展開もふくめて、〈時代〉のひとことで片づけていいのかどうだか。そういや加藤嘉が同様に謎の三国人に扮した話があったけど、第267話「幽霊船死の海を行く」かな。 あれも幽霊の存否より、無意味な正体晴らしに度肝を抜かれる素敵なおはなしでした。
・なんとなく、マルベル堂藤巻潤のプロマイド一覧。
http://promide.com/page.php?s=867
清水を演じていると思わせる写真もありますねえ……頭部の絶壁がえもいわれぬ味わい。