西条八十『人食いバラ』

毛糸玉売りのみなしご英子がひょんなことから大金持ちの元男爵の後継ぎとなる。会ったばかりの老い先短い元男爵から全財産を譲ると言われ困惑する英子。彼には姪の春美という美少女が居たが、春美は浪費家なうえ「おそろしい病気」に罹っているため後継ぎに…

タニス・リー『悪魔の薔薇』

「現代のシェヘラザード姫」の異名をとるタニス・リーの短篇集。 「別離」。吸血鬼は普通、不老不死の身体を持つ妖美な怪物として表現されがちだが、この小説に登場する女吸血鬼は、全ての生き物と同じく醜く年を取る。さる高名な吸血鬼と違い、人間を襲うこ…

第207話「今晩は宝石泥棒デス」

(脚本 池田雄一/監督 土井茂/出演 玉川良一 若水ヤエ子 稲野和子 酒井修 篠田三郎) ここ最近、立て続けにビル荒らしが発生、被害総額はおよそ二億円にのぼる。世間では賊を「和製怪盗ルパン」と呼んで怖れていた。マツノ夫人の邸宅にも黒装束の賊が侵入…

ちょっとしたあれこれ・三百三夜の雨の後

・座頭市シリーズ(時代劇専門ch)は、毎日頑張って見なければと思いつつ、重過ぎて無理。 はじめは善人がほとんど死なず常にハッピーエンドを迎えるような、後味すっきりとした娯楽時代劇だったのだけど、新・座頭市第2シリーズになるともう容赦がない。李…

第205話「ズッコケ野郎は骨までしゃぶれ」

(脚本 山浦弘靖/監督 富本壮吉/出演 平泉征 渚まゆみ 桜井浩子 殿山泰司 藤木孝) 今回の主役は「ズッコケ野郎」。貧乏百姓の小倅。高校にも行けず日陰者の一生を送るはずだったが、思いも寄らない幸運に恵まれる。母親と二人暮しをしている土地が高速道…

ちょっとしたあれこれ・悩みのひととき

暑さでだれているので、ほんとにちょっとだけ。 ・連休はスパワールドとカラオケでゆるゆると。あとは食っちゃ寝。 ・柳さんの「グッド・ミン」読了。柳さんと思しき小説家とその彼氏が、いれかわり穏やかならない日常と不幸(愛犬の死)を語る。複数の語り手…

ちょっとしたあれこれ・グングンちゃん!

・最近はドージーの称号を欲しいままにしておりまして……クロネコが来たからサインして、そのままブツも受けとらずに玄関の戸を閉めようとしたとか、カップ焼きそばを作ろうとして湯きりする前にソース入れたりとか。他にも多々やらかした気がするが忘れた。…

第204話「ガードマンを死刑台に送れ」

(脚本 藤森明/監督 土井茂/出演 磯村みどり 戸浦六宏 久米明 寺島達夫 桜井浩子) 荒木は新たに赴任したビルで高校時代の同級生、花井と再会する。以前は札付きの不良少年だった彼は私立探偵となり、日に十人もの客の相手をしていると自慢げに語る。荒木…

第203話「怪談・呪いの館」

(脚本 山浦弘靖/監督 弓削太郎/出演 入川保則 山東昭子 応蘭芳) 女主人の財産をめぐって三人の子供たちが蹴落としあう話。 清水いわく「毒薬を飲むようなマヌケなガードマンは一人も居ない!」と。それはそうなのだけど、これまでにもマヌケと咎められて…

第201話「怪談・すすり泣くわら人形」

(脚本 加瀬高之 佐藤肇/監督 佐藤肇/出演 楠侑子 戸浦六宏 室田日出男 夏純子) カゲヤマはお抱えの祈祷師が「この屋敷は呪われている」「悪魔憑きが居る」などと語るのを信じ、戦々恐々としていた。養女カヨが墓地で藁人形に釘を打っている、自分を呪い…

戸川昌子『黄色い吸血鬼』

エラリィ・クイーンに絶賛された表題作など、12篇の恐怖小説を収めた短篇集。 ・「緋の堕胎」違法な堕胎を請けあう医者のもとへ、妊娠七ヶ月の水商売女が来る。早産の処置のあと、病院の二階で休んでいた彼女は、書生が目を離した隙に窓から飛び降りて死んで…

滝田栄『滝田栄、仏像を彫る』

滝田栄が仏教徒として禅に学びインドを訪ね、観音菩薩や阿弥陀如来像を彫るまでの「自分探し」の記録。地味でまじめな役者というイメージしかなかったけど、その素顔は、意外にも胸中に激情を抱えた人だった。彼は舞台に立つ際、観客全員を満足させようと限…

『トランスフォーマー/リベンジ』(阿倍野のアポロシネマ8)

冒頭から古代人大虐殺。都市や大学図書館、エジプトの遺跡さえも問答無用にぶっ壊す。敵との対話(平和路線)を重視するリベラルを嘲笑し、男子オンリーな軍隊をかっこよく描いて賛美するわりに、顔も見えない兵士や戦車がロボットそこのけでおもちゃにされ…

ニーナ・サドゥール「空のかなたの坊や」(「新潮」6月号)

訳者の沼野恭子によれば、ニーナ・サドゥールは「ロシアで最も謎めいた作家」と目され、ゴーゴリの『死せる魂』を下敷きにした戯曲も書いているとのこと。「坊や」も『鼻』『外套』のようなどたばた喜劇だが、それら以上に捉えどころがない奇想と思索に充ち…

ちょっとしたあれこれ・レモンライムミント

・土曜は朝からなんばぱーくすシネマで『チョコレート・ファイター』。 終わってからタイトルの意味に気づいた。マーブルチョコレートって、自分のなかではチョコの範疇に入ってなかったから。〈聖なる障害者〉設定はあざといと思ったが(こういった差異も充…

第200話「殺人者に明日はない」

(脚本 増村保造 加瀬高之/監督 富本壮吉/出演 緑魔子 成田三樹夫 田口計 高橋長英)

第199話「皆殺しの島」

(脚本 南英之/監督 土井茂/出演 小笠原良智 山本麟一 広村芳子 木村元 フランツ・クルーベル 川辺久造 地井武男)

ちょっとしたあれこれ・ゆび編み

・『忍者武芸帳』(日本映画専門ch)。「人々が平等に幸せに生きていけるよう戦わねばならん」とか宣言して終わるんだけど、戸浦六宏が言うと、威圧的でも凄く澄んだ声が高みから降りてくるって感じで、このひととはとても平等つうか対等な存在にはなれんワ……

ファミ劇で『ザ・ガードマン』71年版を連日放送中。

ガードマン末期の特色は、大映京都撮影所で制作された作品が幾つかあること。時代劇の名カメラマン・森田富士郎もクレジットに名を連ねています。音楽は山内正から渡辺岳夫(大塩潤名義)に変更、テーマ曲を軽快にアレンジ。城達也の劇中ナレーションも増え…

戸川昌子『深海怪物の饗宴』

金と女をめぐり暗躍する男たちを描いた官能小説。 あらすじ。大兵産業会長・大場はケーブル省の利権にありつくため局長の池野に近づく。彼の道楽である作詞作曲の成功をはかり、プロの歌手を育てようとする。選ばれたのは大場の秘書・石谷の姪の根々子。彼女…

第198話「怪談・車に乗った幽霊」

(脚本 山浦弘靖 富本壮吉/監督 富本壮吉/出演 根上淳 太田博之 村松英子 文野朋子 益田ひろ子) リュウイチが妻を連れて自慢のスポーツカーでドライブに出かけた帰り道。ふざけて猛スピードで走っていたところ、誤って女中の娘ユキを轢き殺してしまう。だ…

笙野頼子「海底八幡宮」

『おはよう、水晶』の感想でもふれた、笙野頼子「海底八幡宮」(「すばる」2008年10月号)を再読。語り手は金毘羅。身体のなかに巻き貝を抱え、ときに頭から蛇が生える権現。この巻き貝は、横たわり丸まる姿がそっくりな、いまはなき猫の魂かと。つまりは自…

第197話「集団誘拐」

(脚本 藤森明 増村保造/監督 村山新治/出演 平泉征 佐藤博 小松方正 川口敦子 永田靖 目黒幸子)

笙野頼子『おはよう、水晶―おやすみ、水晶』

戦闘的な身辺雑記。 神話や宗教(西哲も…)の知識がないため、「おんたこ」三部作など近年の小説にはわからない部分も多々あったけど(設定の風刺自体は楽しめた)、これは読めた。観念的な私小説の体裁を取りながら、自在に文章を変転させると同時に怒り、…

『血と暴力の国』

・コーマック・マッカーシー『血と暴力の国』 映画は未見。装飾を殺ぎ落とした息の長い文章が心地よいが、難解。簡潔な表現をつみ重ね、物語も単純なのに、肝心の部分はみえないのがもどかしい。語り手は人物の心理にほとんど踏み入らず、過去を暴くことで行…

『最後の自画像(「駅路」より)』(日本映画専門ch)

脚本・向田邦子。演出・和田勉。このコンビのNHK制作ドラマというと、メヘテルハーネのテーマ音楽が印象的な『阿修羅のごとく』でしょう。向田ドラマのマイベスト。久世なんざ知らんよ、という。『最後の自画像』にも『阿修羅』の四人姉妹のうち、いしだあゆ…

ちょっとしたあれこれ・サイラーの剃り残し

・堂島ロールってほんと人気ありますよね……わたしは長蛇の列に並ぶなんてできない性分なもんで(常に先頭に立ちたいんだよ!……や、短気なだけ)、モモヤのロールケーキで充分ですわ。

『花実のない森』(日本映画専門CH)

原作は松本清張。他にいくらでもあるだろうに、このファム・ファタール物を映画化するあたりはさすが(?)大映。タイトルバックの赤い光線と、鍵穴から覗いたような女の瞳は美しいが、池野成の音楽が怪談映画じみていて笑える。脱衣場で文子さまを押し倒す…

第196話「花嫁の夫は死人」

(脚本 山浦弘靖 富本壮吉/監督 富本壮吉/出演 緑魔子 成田三樹夫 田口計今井健二) 舞台はポルトガル。アキコは婚約者のカミサカをけち臭い、仕事狂いの男とみなして嫌っていた。愛人と共謀し、結婚した後カミサカを殺して60億もの財産を奪おうと企むが、…

第195話「二億円宝石強盗」

(脚本 加瀬高之/監督 土井茂/出演 河野秋武 穂積隆信 川口恵子) イチハラは宝石店「光輪」店員。彼の幼い一人娘・カオリは小児麻痺を患っている。多額の治療費を得るため、イチハラは強盗の侵入を手引きし、分け前に預かろうとする。が、強盗・ミズタニ…