第205話「ズッコケ野郎は骨までしゃぶれ」

(脚本 山浦弘靖/監督 富本壮吉/出演 平泉征 渚まゆみ 桜井浩子 殿山泰司 藤木孝
今回の主役は「ズッコケ野郎」。貧乏百姓の小倅。高校にも行けず日陰者の一生を送るはずだったが、思いも寄らない幸運に恵まれる。母親と二人暮しをしている土地が高速道路の用地に引っかかり、それを売り渡して4億もの大金を得たのだ。彼は母親と喧嘩し、金を独り占めして熊本へ旅だつ。毎度おなじみ阿蘇白雲山荘に宿泊すると、彼が成金だと知った三人のトルコ嬢に誘惑される。カラフルな下着姿のトルコ嬢たちは「パウダーマッサージしてあげる」などと迫り、上機嫌にさせて薬で眠らせる。そのまま風呂に沈めて殺そうとするが、事情を知ったやくざが乱入、金を横取りしようとする。ここはガードマンの清水と小森さんが阻止。だがズッコケは懲りずにやくざの誘いに乗り、いかさま賭博で金をまきあげられる。清水が身を挺して彼を守り、散財をやめるよう注意しても「日陰者のつまらない人生は嫌だ、これからは好きなように生きるんだ!」と聞く耳持たない。
ズッコケは同じホテルの客、村松石油会社社長の爺さんとその娘と親しくなる。村松いわく会社は破産寸前、このままでは首を括るしかない。娘にひと目惚れしたズッコケは、石油が出るという土地を3億で買収しようとする。娘との結婚が交換条件。さっそく清水に命じて現金4億が入った鞄を取り寄せるが、娘は喜ぶどころかズッコケを侮辱する。村松たちも悪党の本性をあらわし、彼を山小屋に監禁する。そこへトルコ嬢とやくざが現れて醜い小競りあいに。ズッコケは鞄を持って高原に逃げるが、今度は全員から追いかけられ、辛うじて清水と小森さんに救出される。彼は鞄に群がる金の亡者たちに、鏡を見たように呆然とする。嫌気がさした、心をいれかえると誓い、旅行をやめて母親の元へ帰ることに。今度は豪勢な貸切ではなく、普通のバスで……てな話。

・平泉征が訛りのきつい、間抜けだけどどこか憎めない「ズッコケ野郎」を好演。当時は新聞のCMのようなもっさりした渋味は全然なく、すらりとした背格好で爆問の太田光に激似。目をむき唇を震わせ、パンツ一丁の蟹股で金を探す姿にはみっともない愛嬌が溢れています。トルコ嬢には常連の渚まゆみ桜井浩子。潔い脱ぎっぷりを披露。やくざ役の藤木孝は、いつもながらイイ男……口の端をひん曲げた厭味な笑顔に何故だかそそられる。殿山泰司が出演するのは珍しい。全員でズッコケを追いかけるときのぐわっと大口開けたアップが怒れる仏像のようで忘れ難い。
ザ・ドリフターズの歌、軍艦マーチ、ベートーベンの運命がスラップスティックな場景を盛りあげています。ズッコケが故郷へ帰るラストは「ケンタッキーの我が家」。わかりやすい。
・清水がやくざとやりあっている間、トルコ嬢たちはどさくさにまぎれて自分のセーターやストッキングに札束をつめこむ。咎められて嫌々突き返すのだけど、清水、スカートの下の太ももに金を隠したとによく気づいたな! と。勘の鋭さだけは神級、それがザ・ガードマン。