いとうせいこう+奥泉光「文芸漫談」シーズン3番外編「傑作小説を笑う 夏目漱石『三四郎』」

昨日、大阪府松原市文化会館で行われた文芸漫談を観て来ました。ナマ蝶ネクタイいいね。
いとうせいこうは意外に精悍でスリムなスタイル。奥泉先生もとても53歳とは思えない、背広に着られた感あるガリ勉坊や風味な愛嬌をふりまいておりました。前段のお喋りではいきなり奥泉先生が松原市という地名をど忘れ。お茶目。続いて大阪の居酒屋では一人でゆっくり飲み食いできない問題について。見知らぬ客が入れかわり立ちかわり話しかけてきては地鶏の旨さなんかを解説する。ホスピタリティが高いのはいいんだけどさあ、と。あるある。でも奥泉先生も話しかけ好き。公園で自転車の練習をする親子相手に、「ためしてガッテン」で学んだ「知識を共有化」しようとしたり。まさに先生根性。漱石三四郎』の漫談では主に奥泉先生が自説を披露し、それをせいこうが的確にフォローして話を盛りあげていました。詳細はいずれどこかに掲載されるだろうことを期待して省略。取りあえずおおまかに紹介すると。『三四郎』は『坊っちゃん』と並び称される青春小説だが、実はこのうえなくわかりにくい。世界を一つの絵(夢)のように断片化する、瞬間ごとの美しい場面を提示することに意義を置いているため、話の筋を捉えにくい複雑な小説になっている。また新聞連載という媒体を意識した、『なんクリ』を彷彿とさせる風俗小説でもある。主人公のキャラ設定も巧い。三四郎がエリートとはいえ世間ずれしていない田舎出の「ぽんこつ野郎」だからこそ読者も安心して読める。ちなみにせいこうは三四郎を悩ます元凶である美禰子が嫌いだそうで。若いころはその謎めいた魅力に惹かれたけれど、今では本を壁に叩きつけたいくらい気に入らないと。奥泉先生は満更でもない様子。先生の漱石愛はこのヒロイン萌えにあるのではないかと邪推しちまいました。締めくくりは美禰子のうさんくささをフルートで表すという暴挙。お二人のコンビプレーをたっぷりと堪能した一時間半でした。

世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周

世界文学は面白い。 文芸漫談で地球一周