『アバター』(2009)
なんばパークスシネマで。映画体験に吐き気や頭痛は要らない。快楽だけが欲しい。物語がどれほどグロテスクで陰惨でも人の不幸は蜜の味、暗い快楽が生じるけれど形式というか、視界&体感責めで来られると歯が立たない。慣れると大丈夫とは聞いたけど、よほど体調が良くなければ人体実験は避けようと通常版を観たのですが、こっそり飲んだ無印良品のエンボスティーを胃が受けつけず、結局吐き気をこらえての鑑賞となりました。
最近すっかり涙もろくなり、近所のスーパーが閉店すると知っただけでこみあげてくるものがある体たらくですが、この『アバター』でも、主人公たちの危機に異星の生物たちが群れをなして助けに来る場面で号泣しかけました。まず象のような巨大な獣にカブトムシの角をつけるという、「ぼくがかんがえたつよくてかっこいいかいじゅう」的なストレートな発想にしてやられた。『ロード・オブ・ザ・リング』のエントを思わせる頼もしい自然の脅威。できれば彼らが地球人を一掃する勇姿を延々と眺めていたいほど。が、反転した西部劇といえる本作は、獣の反乱はそこそこの描写に控え、性急に男同士の対決へと見せ場を移す。勿体ない。ヒロインが形見の弓矢で仇討ちする展開には、胸が空きましたが。
予告編を観たときは、青い肌の種族の造形を気持ち悪く感じたけれど、次第に見慣れ、長大な手足を使いしなやかに飛び跳ねる、その躍動感を美しいとさえ思うようになりました。彼らのライトアップされた集落も、海遊館の「ふあふあクラゲ館」にまぎれこんだような気分に。生物学者を超自然の力で再生させようとする場面では、大勢のアニメ好きが思わずランランと歌いかけたのではと想像しますが、監督自身もナウシカからの影響を認めているようです。
物語は疑問が湧く箇所も多く、手離しの賞讃とまではいかずとも、映像の迫力には素直に気圧されました。でも一つだけ。異星人も性愛表現は地球人と変わりないのか、音を立ててキスするのか、としょうもない違和感を覚えたことも付け加えておきます。