『青春の証明』

(1978年/西村潔監督他/石松愛弘脚本)
ドラマは原作を大幅に脚色しているが(「戦争の傷痕」にほとんど触れない、家族構成の変更など)、もっとも異なるのは女たちの内面描写への拘泥、ゆえにメロドラマ仕立てでもあることだろう。たとえば笠岡の妻・時子は、原作では終盤まで出番がないに等しい。が、ドラマでは時子役の藤村志保が、常のように細い首筋やら顔の輪郭、白々した額から幸薄さを醸しつつ、笠岡と昔の男・栗山の間で揺れる女心を好演している。息子である時也に「なにがあろうと、わたしを見捨てないでね」と、笑顔をひきつらせて頼む場面は、もちまえの幸薄さが際だっていて胸うたれる。
それに栗山の娘・由紀子。彼女は時也と婚約するが、ある晩、英司という不良少年にレイプされる。で、ドラマでは真っ暗な自室にこもり自棄酒を飲む、時子同様ふたりの男を前に惑うなど、純情なために他人に振り回されやすい女性ではある。対して原作では、レイプされるも心的苦痛に苛まれることなく、その後も婚約前の火遊びと割りきって浮気を重ねる。時也が登山の成果を捏造したと知ると、自分と同じく「虚偽」を犯した、これで対等だとほくそえむような打算的な面を持つ。いずれにせよ、女性がレイプされたのち相手に恋愛感情を抱く、関係を続けるというのは、ある種の男性(女性も?)のファンタジーなのかもしれないが、された側にとっては、これが赦しであり快復の途上ともなるのか。原作の由紀子の方が自分の欲望に忠実なぶんマシな気も。

青春の証明 上巻 [DVD]

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