『女人武蔵』

原作は川口松太郎の小説。脚本・監督(監修)は松山善三。撮影は『必殺仕事人2009』の監督もつとめる石原興。栗塚旭特集の一環とは知らず、東京パトロール社の榊さんこと神山繁氏目あてに見はじめたのだけど、これが一風変わった、昼メロ要素ありの殺伐とした時代劇でおもしろい。
全26話のうち、今のところ4話まで鑑賞。とにかく物語の進行が早い。まだはじまったばかりなのに本能寺の変から秀吉の死、関ヶ原の戦い、巌流島の決闘までを一気に消費。残りはどうなるのか、他に描くことがあるんかいなとはらはらする。まあ、一年間じっくり放送する大河ドラマじゃないし、白井民部の妻・三保が豊臣秀次に犯されて産んだ双子の娘、由加と千加の活躍こそが本題らしいので、ある程度の省略は仕方ないとも潔いともいえる。
神山氏が演じる白井民部など、2話でさっそく三保に愛想つかされたうえ、秀次自害のあおりをくらい切腹。しかも肝心な退場場面がスルーされてがっかり。八千草薫と相思相愛の夫婦役というのが、まずもって無茶な設定だったのかもしれんけど(失礼)。
それはともかく、秀次の暴君ぶりがすさまじい。彼がほんとうに「殺生関白」であったかどうかは、疑問点もあるようだけど、ここでは史実なんぞおかまいなしにやりたい放題。三保だけでなく他の女にも狂い、磔にした女をヤブサメの標的にしたり。でもこのドラマの主役・三保も民部の死後、娘たちとは縁をきりつつも、彼の手下であった二人の男を夫(というか愛人)としてむかえるのだから、欲望の激しさではひけをとらない。演じているのが老いても清純派のお嬢さん・八千草薫なので、不快ないやらしさを感じさせず、のほほんと情交にはげむところも良い。
双子の妹・千加も、両親に負けず欲どおしく「一度ひと殺してみてー」と戦場へ。それでもあきたらず宮本武蔵の弟子となり、女剣豪になろうとする。言葉づかい、髪型、衣装からして女らしさのかけらもない。ぱっと見ヒールの女子プロレスラーみたい。メイクのどぎつさから植松あたりを連想したけど、あれでもまだ可愛いくらい。いつか武蔵を前に、恥じらう乙女みたく女装(?)するかもしれん、と恐々しつつ想像がふくらむ。
原作は未読なので、これからどう展開するか楽しみ。