第149話「雪女」

(脚本 増村保造/監督 弓削太郎/野添ひとみ 仲谷昇 高橋昌也 渥美国泰 内田稔)
 吹雪の夜。張りつめた表情の女が山小屋を訪ねる。小屋の主で写真家の男は、女が理想の女性像そのものだと一目惚れし、歓迎する。二ヵ月後。ふたりは夫婦仲同然となり、男は女を両親にひきあわせ、正式に式を挙げたいと願うが、女は、顔をこわばらせたまま拒絶。
 土木、電力会社社員の男たち、イシカワ、タケモト、トダが榊さんを連れて小屋へ。月給ケースをダムに届けに来たが、雪に足止めされ避難したいという。男は了承するが、女は、客と顔あわせるのを極端に嫌がり、自室にこもってしまう。
 三人の男は、賄賂の件が警察に知れることを恐れ、誰が身を隠すかで揉めていた。イシカワが「寝首かかれる」と部屋を出たのを、タケモトが説得しようとして追う途中、女に逢う。ふたりは、顔見知りであった……翌朝。タケモトは、凍死体として外で発見される。死体の顔は、榊さん曰く「まるで雪女に抱かれたみたいに」笑っていた。次の晩、トダもまた同様の怪死。
 女は元々、イシカワの恋人だった。彼がダムの仕事をとるため、おのれの出世のためにタケモト、トダを含めた男たちと寝るよう強要するのを苦痛に思い、遂には、或る金融業者の色惚け爺を殺害、全国に指名手配され、長く行方をくらましていたのだ。女は、イシカワに睡眠薬を飲ませ、昏睡しているところを吹雪のなかへ引きずってゆき、そのまま放置しようとするが、真相突き止めた榊さんに咎められる。が、イシカワは心臓麻痺を起こし、既に事切れていた。「あたしの復讐、とうとう成功したのね」と力なく笑う女。榊さんは自首を勧めるが、女は、いくら自分が男どもの欲望の餌食にされた犠牲者とはいえ、それでも、ひと殺しであることに変わりはない、恋しい男にだけは、過去の秘密を知られたくないと言い残し、榊さんが止めようとするのも振り切り、雪深い谷底へと身投げする……てな話。
※増村監督作『巨人と玩具』では、お転婆だけど可憐な虫歯少女がハマっていた野添ひとみも、ここでは過去の因縁に囚われる、表情殺した謎の美女に。こういう役は、緑魔子の方が適役ではないかな、とも思いますが。恋人を前にしてもほとんど笑わない女と、女に誘惑され笑顔浮かべながら凍りついた男どもとの対比がまた口惜しさ、無念さをひき起こす。