読書メモ

マルキ・ド・サド=原作/澁澤龍彦=訳/町田久美=絵『ホラー・ドラコニア 少女小説集成[3]淫蕩学校』
青山真治雨月物語
瀬川昌治『乾杯!ごきげん映画人生』
瀬川昌治といえば「喜劇映画の名手」。でも映画狂いじゃない、てれびっこなわたしには『ザ・ガードマン』他大映ドラマの監督としての印象が強い。第293話「逃げろ!妻からの殺人指令」はフランキー堺主演、物騒な題名に反して好い加減なオフザケ混じりの軽快なサスペンス。
ついでに。『乾杯!〜』第十二章「大映テレビ『赤』シリーズの魅力」より引用。野添和子と増村保造のゴールデンコンビ、また「ヒットシリーズの成功の秘密」について。()は引用者注。

 大映テレビ設立後は、(野添和子は)その幅広い人脈を生かして『ザ・ガードマン』シリーズをプロデュース。これは、後々の『Gメン75』と並んでアクション物の長寿番組となった。その陰には増村監督の適切なアドバイスが幾つもあったと聞いている。そして野添さんには、そうした意見を尊重して作品の幅をひろげる雅量があった。
 増村監督を名馬に譬えるなら、さしずめ伯楽といった役どころであろう。
 因みに伯楽とは、中国春秋時代にいた馬を見分ける名人で「千里の馬はあれど、一人の伯楽はなし」という譬えにあるように、有能な人材は居てもその才能を発揮させることのできる人は少ない。映画の巨匠を自らのブレーンとして、テレビのフィールドに引っ張り出した野添さんのお手並みは流石である。そしてこの関係は、『赤シリーズ』、更には、『スチュワーデス物語』が終わるまで続いた。私は大映のヒットシリーズの成功の秘密は、このコンビの類稀な発想、そして緻密なドラマ構成によるものだと今でも信じている。出生の秘密、不慮の事故、不治の病、成さぬ仲同士の恋愛、どの一つを取っても充分にドラマが成り立つ。
 そのすべてをブチこんでおどろおどろした世界をつくりあげ、そのなかでヒロインの純愛が浮き彫りにされる。
 視聴者は目まぐるしく展開するドラマにハラハラしながら画面に引きつけられた。増村監督独特の剛腕、野添プロデューサーのこまやかなフォロー。そしてヒロイン山口百恵さんのクリスタルを思わせる透明な美しさ。その三位一体の成果が驚異的な視聴率を生み出したのだと思う。