139話「偽ガードマン登場」

(脚本 加瀬高之/監督 宮下泰彦/出演 玉川良一 内田朝雄 江見俊太郎 名古屋章)
 深夜。とあるビルに中年男の泥棒が入る。男どもが追うがまんまと逃げられてしまう。
 東京パトロール社。吉田さんが高倉キャップに「例の男が来ている」と笑顔で告げる。男はくだんの泥棒だった。彼はガードマンになりたい、試験があるなら受けさせて欲しいと土下座までして頼み込むが、キャップは「試験は来年三月だ」と相手にせず、清水と小森さんに追い出させる。清水が素性を調べたところ、男はシムラゲンゴロウといい、前科八犯のこそ泥で通称「アンパン」だと判る(怪盗ルパンを気取ってはいるが所詮こそ泥なので、泥棒仲間から揶揄気味にそう呼ばれているという)。キャップはシムラが東パト社に接近してきた理由を知るため、雑用係として雇う。
 シムラがロッカールームを掃除中、小森さんが様子を見に来る。「煙草を一本」とせがまれ、マルボロを渡すと5、6本まとめて抜き取りにっこりするシムラに呆然。応接室ではキャップと吉田さんが人相の悪い男二人と面会。「シムラを出せ」と言うのを断ると銃を突きつけてくる。モニターから危機を知った榊さんたちが助けに入り無事に済んだものの、肝心のシムラがロッカールームから姿を消してしまう。しかも小森さんの給料袋を持ち逃げして。キャップはシムラが悪党から逃れるため、ガードマンを隠れ蓑にしようと考えたのではないかと推理。そこへ問い合わせの電話が。銀座のビルに東パト社の支社があるが、以前からあんなものあったかとの質問。小森さんが単身乗り込むと、確かに扉に「東パト社銀座支社」の表札が掛かっており、中にシムラが居た。叱り飛ばすと相手は平身低頭、謝りはしたものの給料袋には300円しか残っておらず、あとは借金を返し飯食い女の子を買ったのだ、と他人の金で散在しながら少しも悪びれずに応える。もう正体はばれているぞと追及しても黙り込む。
 小森さんは警察に引き渡すため、シムラを夜道に連れ出すが、やくざ風の集団に取り囲まれる。小森さんと男どもが挑発しあう隙に、シムラは、小森さんのオーバーのポケットに小さな包みを入れる。「出すべきものを出せ」と脅す男どもは、シムラが応じないと見ると殴打。小森さんがシムラにオーバーを預け、孤軍奮闘暴れる。駆けつけた清水の援護もあって、悪党を蹴散らすことには成功したが、またもやシムラを取り逃してしまう。ついでに新調したオーバーまで持ち逃げされて。
 警察の調べでは、男どもの正体は「ワタリ組」という暴力団で、新興やくざであると判明する。だが、シムラを追い回す理由が一向に掴めない。そのとき折よく、シムラが小森さんに電話をかけてくる。「国立競技場の正門前まで来て欲しい、オーバーを返す」。到着早々、小森さんが説教を食らわしていると車が停まり、拳銃を持った男どもが降りてきて二人を連行する。その現場を盗み見、顔を顰めるワタリ組のやくざ。清水の尾行を振り切った車は、ワタリ組と敵対する“伝統あるやくざ”「フナダ組」の屋敷に着く。
 蝶ネクタイにガウン姿で食わせ者爺然としたフナダ親分にシムラは、例の包みをひらいて5000万のダイヤを見せつけ、幾らで買うか問う。「どうせワタリ組の金庫から盗み出した密輸ダイヤだ」と舐めきっている親分に対し、シムラは「老舗のフナダ組も売り出し中のワタリ組に押され気味なのだろう、ダイヤを手に入れれば弱点を握ることになる、こんなうまい話はない」と説得。2000万現金で欲しいと持ちかける。親分は渋々承諾。が、二人は監禁され銃で脅迫され、ダイヤを強奪される。そこへワタリ組が数にものをいわせ、シムラを出せと乗り込んでくるが、フナダ親分が「シムラを警察に渡す、あれは密輸ダイヤだとべらべら喋られたら不利になるのは自分たちだろう」と宥め、共同戦線を張ろうと提案。その代わり分け前を出せと言うのに対しワタリも頷く。
 シムラは監禁部屋から脱出するため、鉄格子の嵌った窓の釘を螺子で外す。その際、足を乗せていた卓から転げ落ち、馬鹿でかい水槽をこぼしてしまう。全身びしょ濡れのシムラに「早く脱げ、風邪ひくぞ」と真剣に心配する小森さん。オーバーを脱がせ、自分の背広をかけてやる献身ぶり。二人は一計を案じ、見張り役を倒して部屋から出るが、シムラはダイヤを取り返しに行くと言ってきかず、そうすれば今度こそ必ず改心すると誓うのに小森さんも折れる。親分たちが盃を交わしている間に、シムラは宝石の入った金庫をみごと開けてみせるがやくざに見つかり、再び捕まり皆の前に引きずり出される。
 シムラはダイヤを返せという要求に頑として応じず、こそ泥の意地に賭けるといってダイヤを飲み込んでしまう。驚いたやくざどもは、鳩尾を何度も撲って吐かせようとするが出ない。いいかげん痺れを切らしたワタリ組社長が腹をかっさばくと怒鳴るが、小森さんが「待った」をかける。殺すまでもない、自分の知りあいの外科医に来てもらって取り出して貰おうと言うのだ。やくざもあっさり同意、アキタ病院に電話をかける。小森さんは看護婦に「宿直の(土佐犬顔の)吉田さん」を呼び出してもらう。早速、吉田さんはキャップに場所と手順を報告。
 白衣を着て変装したキャップと清水が現れると、やくざどもは「ここで手術をしろ」と命じる。無理難題に仕方なく納得した振りをしたキャップは清水に、消毒用に使うためブランデーの瓶を開けさせる。と、手に取ったとたん、やくざどもの目に浴びせかける。乱闘。先手を取ったガードマン側が優位にたったが、フナダ親分がシムラに銃を突きつけて形勢逆転。全員捕縛されかけたところへ警察のサイレンが。別室にガードマンを移し、キタ刑事、榊さんと対面した親分たちは「殺人犯の精神異常者が病院を脱け出した、このあたりに逃げ込んだようだ」と聞かされる。充分注意して、ということばにやくざどもが素直に応じ、さっさと追い返そうとして突然、外から男のつんざくような笑い声が。一瞬、動揺したやくざどもに榊さんたちが飛びつき、拳銃を奪う。別室でもキャップたちの活躍により一網打尽(このとき窓から飛び込んできた吉田さんの表情は、まさに土佐犬的というか鬼気迫る形相、なのでした)。シムラは泣いて喜び、小森さんに抱きつく。が、清水が床に落ちたダイヤを発見、実は飲み込まず襟から身体に隠していたのだと判る。
 本部。小森さんがキャップに給料を前借したいと頼み込んでいる。オーバーまで台無しにされて散々だ、と。そのときキタさんがシムラの罪状調査に訪れ、彼が小森さんの給料袋を盗ったと言っているが事実かと尋ねる。小森さんは否定、「金は貸してやった、オーバーはやったのだ」と庇う。加えてシムラが感激をあらわにしつつ、またも煙草を一本せがむのに対し、マルボロ一箱ごと与える。「お達者で!」とシムラが涙ながら連行され去った後、小森さんは榊さんに背を叩かれると弾けるように笑い、ついでにみんなから金をせびるのだった……てな話。


※貴重な小森さん主役話。やくざに一人で立ち向かう場面はいつ背後からどつかれやしないかとはらはら。ラストの別れは感動的だが、こそ泥「シムラ」はこの後も何度か登場する。清水将夫演ずる「三原チーフ」よりも登場回数多いのでは。