第157話「ガードマン パリで大奮戦」

(脚本 増村保造/監督 富本壮吉/協力 アムステルダム観光協会 スイス観光協会 日本航空/出演 中原早苗 田村高廣 野添ひとみ 滝田祐介)
 東京パトロール社本部。今回の依頼人は「オオムラキヨ」という宝石会社の女社長。アムステルダムに行き大量のダイヤを購入する、無事持ち帰るためのボディガードが欲しい、加えてヨーロッパの街を一緒に歩くのだから、どうせなら若くてハンサムなガードマンがイイ、とのこと。キヨは榊さん、小森さん、杉井君らを不躾に品定めした後、愛想笑い浮かべつつ顔を伏せた清水に決める。
 空港にて、露骨に嫌がる清水を笑顔で見送る高倉キャップたち。
まるで刑事に護送される犯人だな
 キヨは以前、いわゆる「風呂敷ブローカー」だった――宝石屋からまわしてもらった宝石をモグリで団地の奥さん連中に売りつけ、その金で株をやり更に儲け、億万長者になったという。それでも、ホテルへ行くのにタクシー代をケチってバスを利用、「ボーイにチップをはずむのも勿体ない」と、清水に荷物を運ばせるほどの倹約ぶり。
 アムステルダムの宝石店でキヨは、もの欲しげに唇舐めまわしつつ、大量のダイヤを買う。日本で売れば二億はくだらない。用は済ませたものの、今度はパリ見物がしたいと言いだし、清水を強制的に同行させる。
 オペラ座前。二人に日本人のポン引き、フルカワが話しかけてくる。一日100フランで観光案内してやる、と勧めるがキミは撥ねつける。そこへウエスギというキミの知人が現れ、フルカワを追い払う。ウエスギいわく、フルカワは高校時代の同級生で画家だが、いまやパリのゴロツキに成り下がったとのこと。キミは、あなたのような「オオエ商事パリ支店」に勤める優秀な駐在員とはえらい違い、とあざ笑う。
 ウエスギの勧めでキミは、パリ観光を愉しむあいだ、宝石を銀行の貸し金庫に預けることに。ダイヤの預り証を受けとった後、エッフェル塔を見物、夜にはナイトクラブ「モンド」へ。ウエスギはキミたちに「ルネ」という、髪を綺麗に撫ぜつけ口髭を生やした、いかにも紳士然としたフランス人を紹介する。彼は第二次世界大戦中、フランスの商事会社社員として日本に駐在していたがスパイ容疑で捕まり、憲兵から酷い拷問を受けたという。それも昔の話です、とルネは巧みに日本語を操り、陽気にふるまう。
 キミはウエスギと二人きりになるべく、「邪魔者は消えて」と清水をホテルに帰そうとする。仕方なく清水が店を出ると、フルカワが待ち伏せしており、生粋のパリジェンヌとやらをあてがおうとする。そのとき物陰から屈強な、やくざらしき男たちが歩み寄り、二人を包囲する。清水は宝石の預り証をフルカワに渡し、自分が盾となり逃がす。が、四人相手ではさすがに太刀打ちできず、何度も腹を殴られ気絶、車で拉致される。
 ナイトクラブ「モンド」。キミはウエスギにそそのかされ、ルーレットに興じる。それを不敵な笑みを浮かべて見守るルネ。
 清水は地下室に監禁される。唇から血を流し頬腫らし、傷ついた彼の前にやくざどものボス、ルネが正体を表す。預り証のありかについて、あくまで空とぼける清水に激怒、自分が「戦争中、憲兵から受けた拷問のやり方」で白状させるべく、何度も殴りつける。清水も抵抗を試みるが、ルネの手下に左肩を撃たれ、重傷を負う。
 フルカワのアパート。彼の同居人、ユリが帰宅。彼女は以前一流のファッションモデルだったが、フルカワとつきあいはじめてから落ちぶれ、いまは「モンド」のホステスとしてルネの下で働いていた。そうして食わせてやっているのに、とフルカワを叱責する。あなたはろくに絵も描かずポン引きの真似事をしている、「才能があるのと思ったのに、まるで乞食みたい」フルカワは癇癪を起こすが、冷静になるとユリに泣き縋り、再起を誓う。世界の中心はもうパリじゃない、いずれはニューヨークかメキシコに渡って大物になってやる、そのためにきっと金を作る、と。
 一方、東パト社本部にキヨから怒りの電話が。清水が預り証とともに行方不明になった、清水はどうでもよいが預り証がないと銀行で宝石を受けとれず大損害だ、代わりに誰かよこせという。「もちろん国際電話の料金はあとでいただくわよ!」高倉キャップは小森さんを連れて急ぎパリへ。
 地下室。清水は食事を渡しにきたルネの手下と取っ組みあいに。鼻血吹きつつ拳銃を奪い、見張り役の男も倒し階段をのぼる途中、銃をとり落とす。他の手下どもの追跡をかわすため、適当な部屋に忍びこむが、そこはユリの部屋だった。ユリは清水を衣装棚に隠し、行方を訊くルネを欺く。清水はフルカワの名刺を貰うと、ふらつく足どりで屋根伝いに逃走。アパートにたどり着くと自分は出血多量で動けない、代わりにキヨに預り証を渡してくれと頼む。フルカワは思わぬ幸運に眼の色を変える。
 キヨ、ウエスギにキャップと小森さんが合流、「一億のダイヤがなければ首を吊らなきゃならない」泣きつくキヨにキャップは、いざとなれば我が社が全額保証する、と請けおう。話が済むとキャップたちを車から降ろし、キヨはウエスギに結婚を申しこむ。「私はつまらない女だけど、取り得がある。お金よ。2億はある」そう言うと、いつもの高慢ちきな性分をおさえ、しおらしく男の肩にもたれかかる。
 フルカワはルネに清水の居場所を密告、金を強請る。ダイヤが欲しければ午後一時、ノートルダム寺院に15万フラン持ってこい、と。懐中の預り証を見てニヤけつつ、まだ意識が朦朧としている清水に「医者に行こう」と言い、車で指定の場所へ。ルネの手下が現れ、輪ゴムで巻いた札束を受けとった後、清水を引き渡す。
 アパートに帰るとユリが待っており、ベッドのシーツが血で濡れている、清水をどうかしただろうと問いつめてくる。フルカワは誇らしげに笑い、ルネに預り証とともに売り飛ばしたと白状する。日本の金で一千万はある、これでメキシコへ行き、思う存分絵の勉強ができる、どうだ利口だろう、と語るとユリが冷たくあしらう。「あなた馬鹿よ」振りかえると、ルネの手下どもが彼を取り囲んでいた。清水とともに監禁されるが、預り証について訊かれると「ホテルの女に届ける前に、ルネに盗まれた」と性懲りなく嘘をつく。
 小森さんはウエスギの案内で、「モンド」のルーレット室に潜入、ひそかに階上へ行こうとしてルネに捕まる。頭を殴られ階段から転落、気絶した彼を見おろしながらルネ、ウエスギがほくそえむ。「うまくいきましたね」。ルネはウエスギからの密告を受け、小森さんを待ち伏せしていたのだ。
 小森さんまで行方不明となり、キヨはますます不機嫌に。「一億円よ。弁償できる? あんたの会社潰れちゃうんじゃない?」「何億でもお支払いしますよ」キャップは強気で応えるも、榊さん、杉井君にもパリに応援に来るよう命じる。はたして清水、小森さん、東パト社の命運はいかに……つづく。

憎まれぐちを叩くために生まれてきたような、でもどこかしら憎めないキヨ(中原早苗)のイキのよい暴言、ちょっと他では見られないであろう田村高廣の情けないポン引き、東パト社存続の危機など、見所盛りだくさんな海外ロケ篇。ゆえに書きたいことが多過ぎ、あらすじが冗長になってしまいましたが……まだまだつづきます。