第325話「200億の鍵は記憶を失った女」

(脚本 安藤日出男/監督 村山三男/出演 加藤嘉 赤座美代子 木村元 高原駿雄 小瀬格 北城寿太郎)
 東京パトロール社に国際局から要人警護の依頼が。相手は「スンダリア共和国」の前副大統領ジョアン。彼は現大統領サバルトの独裁政権打倒を掲げ、亡命先で母国の民主化運動につとめていた。「KLM」を利用し来日した彼を榊さん、荒木、杉井君が車で護送する途中、サバルトの部下たちの乗るヘリが狙撃。敵一味はジョアンが空港に到着した際、ひそかに彼の上着に無線機をつけて追跡し、レーダーライフルでしとめようと企んだのだ。が、パトカーを蜂の巣にされたものの、皆かろうじて一命をとりとめる。
 ジョアンの来日には、深刻な理由があった。スンダリアの国立音楽院に赴任していた日本人の女性ピアニストを捜している・彼女はイシャク前大統領が死ぬ直前、「共和国の運命にかかわる重大な遺言」を聞いた、ただひとりの人物なのだ。
 東パト社の捜査により、その女性は「ハマナカコズエ」と判明。榊さんと小森さんが自宅を訪ねるが、既に誘拐された後だった。
 敵一味は建設中のビルに隠れ、コズエに自白用の睡眠剤を打つ。朦朧と瞼を閉じたコズエ曰く、イシャク前大統領は臨終まぎわ、「後継者はジョアン」だと語ったという。この事実が民衆に知れれば現政権に大打撃となる、「歴史の証人」には、消えてもらわねばならない――一味はコズエを殺そうとする。そこへ榊さんたちが駆けつけ、乱闘に。その最中、コズエが誤って非常階段から転落・記憶を失ってしまう。
 榊さんはある賭けに出る。コズエがイシャク前大統領から一国を揺るがす「大事な遺言」を聞いた日を再現する――もう一度リサイタルをひらいて刺激を与え、記憶を回復させようというのだ。目論見は成功。コズエは頭痛に苦しみながら、懸命に当時の記憶をたぐりよせ、「スンダリソナタ」という謎のことばを呟く。一方、サバルト現大統領の部下たちは、いつのまにか仕掛けた盗聴器でジョアン側の動向を窺っていた。
 「スンダリソナタ」ということばから、ジョアンはイシャクが死ぬ前にくれた楽譜を思いだす。帳面の中身は普通の楽譜、が、黒い表紙を破くと、ジョアン名義の通帳が出てきた。イシャク前大統領はスイス銀行に預けた五千万ドルを、後継者となるに最もふさわしい人物、高潔な人格の持ち主であるジョアンに託したのだ。
 ジョアンの潜伏地である田舎の屋敷。榊さん、吉田さん、小森さん、杉井君らが護衛の任についていたが、ふとした隙にジョアンの秘書ムーディが襲われ、通帳を盗られてしまう。後から合流した高倉キャップと榊さんは「こんな短時間で通帳を盗めるはずがない」「内部からの手引きがあったのでは」と怪しむ。
 直後、敵のヘリに襲撃されるが、ガードマンは発煙筒で応戦、白煙で視界をさえぎられたヘリはあえなく墜落・爆破。屋敷では、敵一味の内通者――秘書ムーディがジョアンをナイフで刺そうとしていた。間一髪キャップたちがとりおさえ、ジョアンの生命を救うが、ムーディは舌を噛んで自殺。彼の懐には、通帳があった。
 それでも、死んでも本望だった、とジョアンがいう。自分の死によって、独裁政権の悪を全世界に、永久に知らしめることができるのだから、と……てな話。