第310話「女子学園スキャンダル殺人」

(脚本 山浦弘靖/監督 国原俊明/制作所 大映京都撮影所/ナレーター 城達也/出演 宍戸錠 根岸明美 福田豊士 川崎あかね)
京都の名門女子大の学長は、世間では「立派な人格者・教育者」と讃えられているが、一人娘のケイコにしてみれば、堅苦しい禁欲主義者にしか見えない。だが彼には別の顔があった。夜には京都駅のロッカーに隠した黒髪、頬傷シール、サングラスで変装する。そして大阪の連れ込みホテルの経営者になりすました上、ホテルの雇われマダムを愛人にしていた。彼は娘の貞操を守るため、力ずくで言い寄ろうとする客やマダムの弟を殺害するが、警察が娘を疑っていることに苦悩する。大学を警備していた高倉キャップと小森さんは、事件の真相を探るため捜査開始。マダムもまた、女子大を乗っ取ろうと企む学部長と共謀して変装道具一式入ったトランクを盗み、学長を脅して一億円を強請りとろうとする。娘のケイコにも、男どもの魔手から身を呈して守ってくれたやくざの正体はあんたの父親である学長だと暴露。世評からかけ離れた「人格者」の実態をあざ笑う。娘は父親の裏切りを気に病み、自殺未遂を起こすがキャップたちに止められる。怒った学長はホテルへ乗りこみ、マダムたちと対決するが逆襲され、娘とともに絞め殺されそうになるが……てな話。

・初出演(多分)、宍戸錠による現代版「ジキルとハイド」。やむにやまれず、という初老男の煩悩・懊悩を描くよりも親子愛に重点を置いているのが勿体ない感じ。
・いつもと趣の違うムーディな照明と音楽は、もしや日活映画を意識しているのではと思わせなくもないが、根岸明美オバQみたいな甲高い声とヒステリー演技、父娘の泥臭い愛憎ドラマがやはり大映印。
・学長室やホテルの部屋など、室内でも白い息を吐きながら喋っているのが不思議。京都のスタジオはそんなに寒かったのか。
宍戸錠がゲストということで、競争心があったのかどうか、いつもよりいっそう高倉キャップの髪がてらてら濡れ固まり、スーツスタイルもばっちりキマリ過ぎている気がする。学長の娘を強引に誘惑しようとするマダムの弟との格闘を終えたあと、はらりと覗けた背広の裏地が鮮血のような赤。加えてネクタイ、ポケットチーフも赤。素敵だ。願わくばもっとジョーと絡んで欲しかったが、メインストーリーから蚊帳の外状態に追いやられた70年代ガードマンでは、叶う筈もなく……第67話「高倉キャップを消せ!」における、天知茂との胸躍る対決場面のようなものはもう、見られそうにない。
・小森さんが「田んぼを道路公団に売って儲けた田舎親父」に扮してホテルに潜入捜査し、ホテルのバーで女の子はべらしつつ酒を飲む場面がある。Wikipediaによれば、このドラマのモデルとなった日本警備保障の創始者・飯田亮が、

番組の脚本について「乱暴な言葉づかいをしない」「女がらみなし」「酒は飲ませない」の条件を出した

とのことだが、この頃にはもうそんな条件などなし崩しだったようで。