第137話「女は一度勝負する」

(脚本 藤森明/監督 宮下泰彦/出演 中村メイ子 しめぎ・しがこ 園井啓介 坪内ミキ子 仲村隆)
 とある会社の総務課に勤めるハイミスBGキミコは、「女の子に甘い」「規律を守れ」と課長にさえ楯突くしっかり者。今日も後輩の女の子がだらしないとお説教する間に、旧友から電話がかかる。十年ぶりに再会する旧友は、新進作曲家タガミコウイチの秘書をしており、彼女もまた独身であった。理由は、タガミを一途に愛しているからだと言う。が、タガミには、生け花の名門家元の生まれで美人令嬢、オオガワラハナコという婚約者が居る。彼をとられたくない、結婚を妨害するため力を貸してくれという頼みを、キミコは喜んで引き受けるが、その計略の突拍子もなさに驚く。「タガミを誘惑して子供を産んでくれ」「子供をどこかから借りて大芝居を打て」というのだ。言う通りにしてくれたら500万やる、という提案にキミコはそそられ快諾。
 秘書は早速、タガミをバーに連れ出す。ザ・スパイダースの「バン・バン・バン」が流れ・若者たちがゴーゴーを踊り狂うなか、フーテン娘に扮したキミコは泥酔したタガミに接近。幻覚剤を仕込んだボンボンを与える。公園の繁みに横たわらせ、朦朧としているタガミに抱いてくれと乞う。
 時が過ぎ、キミコは東京パトロール社を訪れ、高倉キャップに「子供を守って欲しい」「何者かに命を狙われている」と語る。BGとして真面目に働いてきた自分が「たった一晩の冒険」を敢行した結果、タガミの息子を産んだ。それでもタガミは令嬢ハナコと結婚するため、「事実無根」だと否定していると嘆く。うちは赤ん坊のガードなんぞ引き受けない、と撥ねつけようとするキャップにキミコは、「週間婦人」のスキャンダル記事を見せる。それでも応じないとみると、嘘泣きと自殺未遂演技で渋々承知させる。
 キミコのアパートに来たキャップは、赤ん坊のコウタに会う。その際、天井から吊るしていたオルゴールが赤ん坊めがけて落ちるが、間一髪救いだす。オルゴールは回るとネジが緩んで落ちる仕掛けになっており、鋭利な刃物が仕込んであった。キミコは警察には訴えず、優秀なガードマンなら自分で捕まえろと挑発、「熱血ガードマン」キャップはまんまとノせられる。
 タガミ邸。赤ん坊を抱いたキミコはハナコと対決・週刊誌記者がインタビューやら写真撮影するなか、しおらしく泣いてみせる。押し問答が続くのを見かねたキャップは、キミコたちに血液検査を勧める。はじめは拒んでいたキミコも、ハナコに「嘘吐き」呼ばわりされていきり立ち、勢い検査を受けることに。秘書は赤ん坊の素性に疑問を持つが、キミコは「親戚から借りた」と説明。
 会見後、キミコはキャップに赤ん坊を預け、秘書から金を貰うために一人指定の場所へ。キャップは尾行するが、それに気づいた秘書に背後から撲られ気絶してしまう。
 東パト社に帰ると榊さん、小森さん、清水がなにやらニヤついている。皆は「週間婦人」の記事を読み、キャップがキミコに都合よく利用されていると面白がる。キャップは苛立ちつつも、榊さんたちに調査を命じる。
 血液検査の結果、タガミの「何万人に一人」という珍しい血液を赤ん坊が引き継いでいると判明。週刊誌記者がタガミに「科学的な証明」をぶつけるが、秘書は「ありえない」と否定。キミコは「そっとしておいてあげて」と急に弱気になり、煽る記者にも応じず引き下がる。アパートで二人きりになるとキャップに「タガミが好きになった」「もう責めたくない」と打ち明ける。それもまた女心ゆえである、と。そうして恋する女らしく鏡台の前に座り、香水を振りまいた途端、床にくずれ落ちる。驚いたキャップもまた、眠気に抗えず倒れてしまう。部屋が静まるのを待って現れたのは、秘書だった。彼女はキミコを拉致し、空き家に捕縛する。「赤ん坊と一緒に姿を消せ」と命じるが、キミコは拒絶・赤ん坊は、キミコとタガミの実の息子であると告白する。世間の非難も制裁も受ける、でもあんたには渡さないと抵抗し、タガミが好きだと絶叫するキミコの口を封じるべく、秘書は何度も鞭打つ。
 小森さんの報告によりキャップは、キミコと秘書が小学校以来の友人である事実を知る。二人で赤ん坊をあやしているところへ来た記者に、週間誌上で子供の世話をするお手伝いさんを募集するよう頼む。
 タガミは秘書に、キミコとの結婚を決意したと話す。が、「赤ん坊さえいなければ君と結婚してもいい」という言葉を聞き、秘書はまたも謀略をめぐらす。お手伝いに変装するとアパートを訪れ、まんまと赤ん坊を連れ出すと車に乗せ空き家へと向かう。キャップが仕掛けた罠とも知らずに。
 度重なる拷問に弱り果て、気絶しているところを蹴り起こされ、赤ん坊の寝顔を見せつけられたキミエは、それでも気丈に反論する。あんたはタガミの名声や、数十億の財産に惹かれて結婚しようとしているが自分は違う、ほんとうにタガミを愛しているのだ、と。対して秘書は、金に目がくらんで何が悪いといわんばかりに冷酷に笑い、刃物を振りかざすが……てな話。

しめぎ・しがこは、第126話「女の戦争」でも女相手に執拗な拷問くわえておりましたな。とはいえ相手が道化師メイクの中村メイ子では、どうにも凄惨なエロスに欠ける気もしますが。