第330話「スリラー!ミイラ墓の女」

(脚本 加瀬高之/監督 宮下泰彦/出演 北村和夫 奈美悦子 田代信子 宗田政美 今福正雄 浜田晃 蟹江敬三)
 東京パトロール社本部。榊さんに若い女性から、電話で「助けて欲しい」との依頼。
 相手は「キクカワチアキ」と名乗り、二年前、榊さんに会ったことがあるという。場所は岩手県「大血山村」の山小屋。キクカワの名も声にも覚えはないが、若い女性の頼みとあらば、フェミニスト(女性びいき)の榊さんが放っておけるわけがない。
 「バカにつける薬はない。行ってこい」
 高倉キャップの了承も得て、榊さんは喜びいさんでひとり出発。バスも通れない険しい山道を登り、つり橋を渡って大血山村に着くとすぐ、村人たちに小屋はどこかと訊ねるが誰も応えない。木を伐採している三人の若い男に「女のひとは居ませんか」と訊いても同様に無視される。
 夜。目的の山小屋を見つけ、中を覗くと若い女が逃げる。人違いかと思い、キクカワを探すが、他には誰も居ない。あてがはずれた榊さんが仕方なく外に出ると、草叢に血まみれで倒れている男を発見、彼こそがキクカワチアキだった。彼は二年前、海で溺れているところを榊さんに助けられたことがあり、今度も窮地を救ってもらおうとしたものらしい。が、いまや彼は虫の息で、ひとこと「水が光る」と呟き、「Au」という謎の書きおきを残して死ぬ。持ちものから、彼の素性は「ジョウサイ大学」工学部の学生であると知れる。
 翌朝。村人たちと榊さんが亡骸を囲んでいると、ハツエが泣きくずれる。ハツエは昨晩、榊さんを見て逃げた娘だった。
 ハツエの伯父が、よそものであるキクカワと榊さんを罵るが、ミツコという女に「ハツエを学生にとられたくなくて殺したんだろ」と逆に食ってかかられる。榊さんが「光る水」について訊くが、みな一様に冴えない表情で黙りこむ。
 榊さんがひとり捜査を続けて出歩くうちに、頭上から岩石を落とされる。犯人を追いかけるが、待ち伏せしていた男たちに頭を殴られ昏倒。
 襲った連中は分家のカツミ、タクジ、シゲル。彼らはハツエの婿となり、時価何億という土地を手に入れるよう、伯父に煽られていた。強欲な伯父に、シゲルを愛するミツコが悪態をつく。が、彼女には両親の死後、伯父によって分家から本家にひきとられた背景があり、そうたやすく伯父の意向に逆らえない。
 ハツエもまた、キクカワとの仲を伯父に裂かれた。ある晩ふたりは山小屋で密会し、一緒に逃げようと誓う。そして、よそものであるため人目につきやすいキクカワに代わり、ハツエが榊さんに連絡してきたのだ。ハツエは榊さんに頼まれ、東パト社あての手紙をポストに投函するが、何者かがそれを盗み読む。
 翌日、分家のカツミが、電気ノコギリで首を切られて死ぬ。榊さんは、カツミの母親に話を訊こうとして拒絶された直後、賊に銃で狙撃される。山小屋に這入り、ひと息つこうとして甕の水を飲んだとたん、はげしい腹痛をおこす。誰かが甕に農薬を入れたのだ。
 ハツエが薬をとりに行こうとすると、滝の前でタクジが待ち伏せしていた。タクジは力ずくで自分のものとすべくハツエを襲うが、シゲルが割って入る。ふたりの男が争っている隙に、ハツエは逃げる。
 一方、榊さんは、鉄砲をもったハツエの伯父に「東京へ帰れ」と脅されていた。「俺が出ていくと騒ぎが大きくなるばかりだ」「またひとが死ぬだろう」。伯父の命令に頷きながらも内心、闘志を燃やす。
 帰るふりしてつり橋に来ると、川で溺れているタクジを発見、急いで崖を降りようとして再び狙撃される。岸に着くとタクジは既に事切れており、榊さんは、自分を襲ったのと同じ犯人に突き落とされたのだろうと推理。ハツエの伯父に怒鳴られた末、東京へ帰るとみせかけ、洞窟のなかに隠れる。
 ついにはハツエの伯父が、首つり死体となって発見される。婿候補でひとり生き残っているシゲルに、カツミの母親が責めたて、駐在も取り調べをしようとする。シゲルは「自分は犯人じゃない」といいつつ逃走。村人たちが鉄砲もち追う。
 一方榊さんは、洞窟の壁に書かれた「Au」という文字と、泉のそばに転がる鉱石に気づく。「Au」とは、金の元素記号のことだったのだ。
 外の騒ぎを知り、榊さんは、シゲルを洞窟にかくまう。いきりたった村人たちが、むやみに鉄砲を撃ち続けるうちに、衝撃で岩壁が崩れる。閉じこめられた榊さんたちが、酸欠になる前に脱出しようとすると、何者かが外から穴を掘りおこす。隙間から汚い髭もじゃの顔を覗かせた男がふと、うつむき扮装をとると、榊さんがほほえむ。男は手紙で知らせを受け、救援にきた小森さんだった。
 小森さんとともにハツエが洞窟に這入ると、「そこにある金鉱はあたしのものだ」とミツコが、鉄砲をかまえて現れる。ミツコこそ、伯父やカツミら分家と本家の人間を皆殺しにして、金をひとりじめしようとした真犯人だったのだ。自分を捨てたシゲルもふくめ、撃ち殺そうとしたとたん、榊さんが大笑いする。
 「ここにあるのは金じゃない、黄銅鉱だ
 驚いたミツコが、鉄砲をさげた瞬間、榊さんと小森さんが取り押さえる。「騙されたな。あれはまちがいなく金だ!」泣き叫び、口惜しがるミツコ。
 事件を解決し、村を去ろうとする榊さんたちにハツエは、キクカワの墓を守って生きてゆくと告げる。シゲルもまた反省し、陰ながらハツエを支えると誓う。「ハツエさん、今度こそ幸福になって欲しいな」。榊さんたちは笑顔で、もときた橋を渡るのだった……てな話。

最近の、というか71年版ガードマンが面白過ぎて、TBSchの方の感想がなおざりになっていますが、それはまたおいおいに。
・榊さんが着いて早々、村人たちが無言で泥深い道をぞろぞろ歩き、背後から忍び寄る場面がいかにも山奥の寒村の閉鎖性、陰湿にこもる敵意をあきらかにしていて恐怖を煽る。
・分家の若衆のひとり、むさ苦しい長髪とサングラスが無駄に色っぽいやくざ者、タクジを演じるのは蟹江敬三。例のごとく(!)獣性発揮し女を犯そうとするが未遂に終わり、最後は滝壷に落ちて絶命。見せ場少なく残念。