『大決戦!超ウルトラ8兄弟』メモリアルボックス購入

劇場でみたときと違い、個人的には苦手なメビウスにさえ愛着が湧いた。初代マン、セブン、帰りマン、エースの人間体が高速で動いて自動車事故を防ぐ場面、おばさんたちの華麗/加齢なフラダンス、それに野球選手や自転車屋のおやじまでが光の国へと飛び立つ、暴走気味のラスト以外は素直に祭にノレた。ただ、ウルトラシリーズに相応の思い入れがあるひとか、長野やつるの他のファンでなければ、敷居の高い映画だろうという印象は変わらない……とかいいつつ一緒にみた、ウルトラ好きでも何でもない、最近は見知らぬ子供にまじってガンバライドなんぞで遊んでいるダンナは、ダイナ&ガイアが登場した瞬間、感激して泣いたそうだし、自分の印象も単なる杞憂かもしれない。よいことです。
そのうえで注記すべき点は、若いころ、実相寺映画などで色気をふりまいていた桜井浩子さんがフラダンスを踊るとき、惜しげもなく披露した二の腕のいかんともしがたさ。また、川地民夫がエンドクレジットでトメだったこと。いまどきの劇場公開作としては、貴重なことではないでしょーか。とはいえ再見しても、やっぱり国連の偉いさんじゃなしに年老いたヤーさんにしかみえないのは、もはや愛嬌の域。

東京港

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ところでこのメモリアルボックスには、特典として「レプリカ台本」がついています。
そこには本作の台本とともに、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟2』のプロットも収録されています。前作の好評を受けた円谷スタッフが、『ウルトラマンタロウ』の主人公である東光太郎=篠田三郎に出演してもらおうと努めた結果、できあがったのがこのプロットであるとのこと。が、篠田が辞退したため実現には至らず。残念。
篠田は、昭和ウルトラ俳優のなかでは唯一、『メビウス』TVシリーズと映画のどちらにも出演していない。長谷川ショパンでさえ顔出ししたのに。欠席理由は、ネット上でもあれこれいわれておりますが、つまりは「年老いたいまとなっては、東光太郎を演じることはできない、それにタロウ最終回の意義を大事にしたい」ってことのようで。若いとき限定の役、というなら還暦越えた『高校生番長』リメイク、とかも駄目か。そらそうだ。
タロウメインの物語なので、ウルトラの父母が登場するのは当然として、レオ&アストラ兄弟、80までが活躍するという夢の豪華共演映画。ウルトラシリーズの名子役たち、白鳥健一くん、ホシノ少年、坂田次郎くん、梅津ダンくんも中年おやじになって登場。東光太郎と宗教施設、じゃなしに怪獣に肉親を殺された孤児を預かる施設「ウルトラの家」を支えている。『メビウス』の地球防衛軍・GUYSの面々もジェットビートル、ウルトラホーク、マットジャイロ、タックアロー、コンドルに乗って地球の危機に駆けつける。人類の叡智は、ウルトラマンにエネルギーを与えるほどの境地に達しております。ちとご都合ぽいですが。ミライの科白「僕にもこんなに素晴らしい家族がいた!」が泣かせます。
この物語は「ウルトラの家」に住む子供たちとウルトラ兄弟との心の交流を描いており、主題は〈家族の絆〉。東光太郎はタロウと分離した後も、「ウルトラの家」の「大黒柱」として、みなしごたちの未来を守っている。祖父母をなくした少年と光太郎の関係に、健一くんとのそれを重ねあわせることで感動も倍増。他の兄弟も同様。モロボシダンには、『セブン』に子役が出て来ないので他とバランスを取るためか、自分の娘のように思う女性が居る。郷さんはミライに坂田さんの家族写真をみせる。ここは、前作でも幻のゲスト出演をはたした岸田森さんのファンへの絶妙な目配せとなるところ。森さんが映るだけで動物と化して狂喜するファンとしては、この恒例ともいえるサービスにはニヤニヤするかぎり。
舞台が横浜というのは『超8兄弟』と変わらず。ただ、プロットを書いた脚本家・長谷川圭一みずからが認めているけど、光の国だけでなく日本各地が戦場になるなどの壮大な設定であるため、予算・スケジュールともに収拾がつかず、結局は(このままの形で)陽の目をみることはなかっただろうと思われ。それにもし実現していたとしても、若い人気者が集う『超8兄弟』のインパクトには勝てなかっただろう。去年は幸運なことに羞恥心効果もあったし。
それでもみたいのだよなあ、爽やかに笑う東光太郎じいさん。
シノサブ、映画『接吻』の俗物になりきれない死刑囚の兄貴役もよかったけど、ウルトラバッジを天にかざし、「タローウ!」と叫んで変身して欲しいのもやまやまなのですよ……ほんと、不在により愛情がいやますとはこのことなのだなーと痛感しました。
あとは未練の鬼と化すだけですね。もうなっているけど。