『接吻』(シネリーブル梅田)

拘置所への差し入れとは不思議なもので、観ているだけでほくほくします。蜜柑だけでなく衣類や歯磨き粉も美味しそうでした。血塗れた手はカンベンですが。
殺人犯トヨエツの兄貴役は篠田三郎。「自分には関係ない、そっとしておいて欲しい」と一貫して弟を拒絶する姿に、『高校生心中 純愛』(1971)の主人公を重ねあわせ、やりきれない思いになりました……こちらの主人公は家族思いの優しい少年。父親を殺害した兄の裁判費用を稼ぐため高校を中退、土方などやりつつ懸命に支えようとする。が、あえなく兄は死刑宣告を受け、しかも控訴せず死刑を望むと気弱に語るのに対し、説得を試みるけれど訊きいれられず絶望する……と比較すると『接吻』の兄は、一見自己中心的だけれどそこは篠田の特質というべきか、責任逃れをするにも純粋さ、頑ななまでの一途さが滲みでていてどうにも憎み難く(ああ、本気で関わりあいたくないのだな)と心底納得させられてしまうのでした。

高校生心中 純愛 [DVD]

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