第332話「この夏女子学生がやった大冒険」

(脚本 今子正義/監督 宮下泰彦/挿入歌 交楽竜弾/出演 八並映子 中尾彬 赤座美代子 内田朝雄 三宅くにこ 渥美國泰)
 ホテル「スカンジナビア」に宿泊する女子大生、ミキとキョウコ。
 ミキは観光会社社長のひとり娘で国立大の学生。ボートを暴走させる、ダンスサロンでゴーゴーパーティーを主催し男子学生と遊ぶ、同級生キョウコを下女扱いしオートバイで追いまわすなど、親の権威をかさにきてやりたい放題、はてはキョウコの恋人シンイチに横恋慕する。対して沼津の港で働く貧乏学生シンイチには、自分だけのヨットを買い世界一周するという夢があり、それをかなえるためにもミキの誘惑に乗る。
 ふたりはキョウコの眼前でいちゃつき、ボートから転落させたうえ沖に放置し去る。シンイチは義理程度に心配そうにふるまうが、ミキが「鱶に食われたってどうってことない」と一蹴するとともに笑う。部屋に帰ると、ガードマンに救助されたキョウコが居た。痣のできた顔を歪め、怒りをあらわにして。
 翌日。ミキはキョウコを同行させ、沖で泳ぐ。いつものように横暴に、ヨットから浮き輪を投げて引き上げろと命じるが、キョウコは薄ら笑いを浮かべて応じない。あげく、ミキが差しだした手を蹴飛ばす。「恋人を奪った女を許せない」怒り心頭のキョウコにミキは、父親がくれたヨットの購入資金500万をあげるから、と命ごいする。が、金のありかを白状したとたん、海に沈められて絶命。
 キョウコはミキに変装し、銀行へ行くと現金500万を受けとる。夜、ボート上でシンイチに「ブラジルのおじが大金を遺してくれた」と説明する。が、たちまち嘘と看破され、首を絞められると真相吐き、ミキの死体を見せる。「じっくり眺めたら。女は恋のためならなんだってやるわ」「警察に言えばあんたと共謀して殺したと言う。わたしはあんたを離したくない」。冷静になるとシンイチはキョウコを抱きしめ、一生愛すると誓う。唐突な心変わりを疑われるが、本気だと言いくるめてしまう。
 ミキの死体を片づけるべく、ボート置き場に運ぶ。直後シンイチは、金さえ手に入ればおまえに用はないと再度、キョウコを絞め殺そうとする。が、もつれあう拍子に階下に転落、頭を砕き死ぬ。キョウコは彼のユニフォームを着て車を走らせ、ふたつの死体を海に隠す。「スカンジナビア」に戻ると荒木、杉井君に呼びとめられる。丸めたユニフォームを包みのように見せかけ、その場は愛想よく誤魔化す。
 キョウコはミキの父親に「ふたりはドライブに出たまま帰ってこない」と騙り、証拠品のユニフォームをタラップに捨てる。それを荒木たちが発見、昨夜キョウコが持っていた包みがシンイチのものであることに気づき、ようやく本腰いれて捜査開始、ボート置き場にて手がかりを探すが何もない。それでもあきらめず懸命に調べまわっていたとき、船客の悲鳴が。並んで停泊するうち一艇の覆いをとると、そこにはミキとシンイチの死体があった。
 一方、キョウコは再びミキに変装して沖へ出、陽射し浴びつつ大金に見惚れていた。が、荒木たちとミキの父親に見つかり、ボートで逃げる途中あやまって札束ごと海に落ちる。水面に散乱する紙幣を睨みながら、彼女は泣きわめく。「ミキとシンイチが悪いのよ、わたしを虫けらのように扱ったから……わたしたちを狂わせたのはあれよ」

・舞台が海、ってだけでなく金持ちに化けるのも『太陽がいっぱい』風味。
令嬢主催のゴーゴーパーティにて、サイケなボディペインティングほどこして踊り狂い、奇天烈な歌をうたっていた方が「交楽竜弾」さんのようで。グーグルで少し調べてみたところこのようなものを見つけましたが……「子宮人間祭」とはなんぞや。
・いろいろ修正。ヨットとボートを素でまちがえちゃだめでしょ……。
・耳目ひく事件が起きたことでこぞって詮索、おのれの情念注ぎこみつつ他人の内面に探りいれたりと、例のごとく賑わっていますが。通り魔殺人、というと動機は不透明だからこそ、あれやこれやと想像するのも無理はない、とは前置き。
このドラマでは今回のように人殺しが登場したとしても、動機はハッキリしている。
動機はカネ。怨恨、嫉妬なんてのも絡んではくるが大抵、最後はカネ欲しさに落ち着く。あと名誉欲も。すがすがしいほど明快で普遍的。ま、警察でなく「ザ・ガードマン」だし、刑事ドラマと違って取り調べ室で善悪とも情念炸裂させる場面もないため、さほど人間性を掘りさげる必要がないゆえかもしれませんが……でも金銭欲はみな人並み以上。異常。過酷な業務を強いられる東パト社社員含む。