第327話「ショック!雨の夜は死人が笑う」

(脚本 安藤日出男/監督 国原俊明/出演 戸浦六宏 長谷川待子 江波多寛児 水原麻紀 木村元 遠藤征慈 橋爪功)
 宝石店に強盗が侵入。彼は「千里眼」の持ち主を自称、宝石が金庫ではなくクーラーのなかにあることをみぬく。二人の店員に銃を突きつけ、撲りたおすと時価一億円のダイヤ「乙女の涙」と売上金を奪い、逃走する。
 強盗、やくざのワタルは、故郷である北陸の寒村に帰る。そこは昔、平家の落武者が怨霊となって村人を祟り、恐れをなした村人がみな逃げて飯を炊くものが居なくなったという言いつたえから「釜無村」と呼ばれていた。現在は五世帯が暮らす過疎地域で、彼らは一様に排他的なため、かくまって欲しいというワタルを拒む。が、ワタルが300万の「厄介賃」をくれると、ろくに蓄えもない彼らは渋々受けいれる。
 東京パトロール社本部。宝石店の女社長、ツジムラがガードマンに犯人逮捕を依頼。加えて犯人をつかまえ「乙女の涙」をとりかえしたものには、一千万の懸賞金をだすという。強盗は「透視能力」の持ち主らしい、と聞くと榊さんは「以前からESPには興味があった」と興奮、杉井君とともに捜査に乗りだす。高倉キャップは、ツジムラの「乙女の涙」に対する異常な執着を不審がる。
 「釜無村」。猟師のセンキチ、イチロウ、ブイチの三人は、ワタルが隠し持つ宝石に目をつける。寝床を襲い、洞窟に追いこむと首を絞める。「死ぬものか……あの世から祟ってやる」とワタルは、呪詛はき死ぬ。三人は土砂降りのなか、亡骸を竹林に埋める。
 榊さんらはワタルの身元を突きとめ、村にくるとセンキチたちに「犯人に関する情報提供をすれば懸賞金がでる」と呼びかける。だが村人は拒絶。盗んだ金をわけてもらった手前、誰もワタルについてうちあけようとしない。
 イチロウは行方不明の「乙女の涙」を探す。妹のチエが「不吉な予感がする」と制止するのもきかず、ひとりでワタルの亡骸を掘りかえそうとする。と、雷が轟くと同時に死んだはずのワタルが目をさまし、起ちあがる。目玉を金色に輝かせ、鍬を奪うとイチロウの頭を砕く。一連の奇怪な光景を盗み見ていたチエもつかまえ、いずこかへ連れ去る。
 よみがえったワタルはブイチをも襲い、絞殺する。一方、榊さんらは、白いトレンチコートを着た謎の女が山奥をふらついているのを目撃。女は荒れはてた小屋にはいり、猿轡をかまされ天井から吊りさげられたチエを救出する。女の正体はツジムラ社長で、ガードマンに依頼しつつも独自に、ひそかに宝石をさがしていたのだ。
 例のごとく雨の晩。センキチは、狂わんばかりに「死霊の祟り」を恐れる。自宅に榊さんらをひきいれ、厳重に戸じまりしてたてこもる。が、雷鳴とともにワタルが、血の気うせ青褪めた顔に長髪ふり乱し、窓を壊して侵入。猟銃で撃たれ、胸から口から鮮血を流しながらもセンキチを押さえこみ、首を絞めようとする。そこへ榊さんらが現れ、ひきはなされるとワタルは息たえる。「乙女の涙」は腹のなかだ、と言いのこして。彼は宝石を隠そうと飲みこんだ際、喉につめて窒息した。そして一時的な仮死状態におちいっていただけで、土中から掘りおこされると意識をとりもどしたのだ。
 本部。キャップたちが談笑している最中、ツジムラ社長が訪ねてくる。大事な「乙女の涙」をとりもどせてよかったでしょう、と聞かれたツジムラはほほ笑み、あんなものに値うちはない、贋物だから、と告白する。日本一有名な宝石の小売店が、贋物をつかまされたと知れわたれば、信用も評判もがた落ちになる。だから自分の手でとりもどそうとした。もう、あれは永遠に葬ろうと思う――ツジムラが帰ると、キャップたちは事件の総評をする。恐ろしいのは「死霊の祟り」よりも贋のダイヤに魅せられ、殺人さえもおかす人間の欲望、執着ではないか、と……てな話。