第318話「夫を盗まれた妻の復讐」

(脚本 増村保造/監督 宮下泰彦/出演 中原早苗 岡田真澄 松岡きっこ 津川雅彦 加藤和夫 藤木孝 渡辺文雄/協力 スイス国立観光協会 KLMオランダ航空)
 スイスの教会にて、日本人の男女が結婚式を挙げる。登山家キミオと看護婦サエコ互いの見栄えに少々差のあるカップ。以前からサエコは、キミオの登山狂いを控えるよう諭していたが、キミオもまた、スイスに定住し夫婦生活を送るに際して、無茶な登山はやめ堅実に働くと約束していた。
 ふたりを「ヤチヨ貿易スイス支店長」カナイ、イシザカとジローの兄弟、ジローの恋人ユミコが祝福する。が、イシザカ兄弟とユミコは貧乏にあえぎ、ひそかに「ヤチヨ貿易」の輸送車から貴金属を強奪する計画を立てていた。
 日本から派遣されたガードマン清水がカナイとともに「スイスクレジット銀行」へ赴き、2億円の貴金属を日本へ持ち帰るべく、ミキオが運転する車でチューリッヒ空港へ向かう途中。イシザカ兄弟たちは、トレーラーで進路を阻む。イシザカの正体を見破った清水が撃たれ、雪積もる谷底へ転落。車は炎上。警察が黒焦げ死体を確認。ミキオの服を着ているものの、本人とは特定できず。「真犯人」イシザカは、行方をくらましたまま。新婚早々夫を亡くし、泣き崩れるサエコ
 東京パトロール社本部。「ヤチヨ貿易」部長は、清水の「無能」を非難。東パト社に2億円の賠償を請求する。高倉キャップは荒木と杉井君に至急、スイスに行き清水を助けるよう指示。
 飛行機にて、ふたりは、同僚清水の身を案じる。
 杉井君「清水さん、元気だろうか」
 荒木「大丈夫、タフだから」。
 荒木の想像通り、2発の銃弾をくらいながらもぴんぴんしている清水は、寡婦サエコを訪ねる。聡明なサエコは「犯人はイシザカではない、カナイだ」と推理。銀行のロッカーに2億円の貴金属を隠している、と。清水が試しに接近するが核心に迫れず、サエコはその消極性を詰る。そして復讐を速やかに遂げるべく、イシザカを捜すジローとユミコと共謀し、カワイから宝石を奪おうと企む。
 スイスの街はカーニバルの真っ最中、ひとごみに紛れ楽隊に仮装した三人は、ガードマンの監視をくぐりぬけカナイを脅迫。清水が発見するも銃を突きつけられ、ともに連れ去られる。が、機転を利かしてカナイのスーツケースと自分の腕に手錠をかけ、鍵を棄ててしまう。フェリー列車に乗り換えた後、サエコはカナイの頬をナイフで切り、イシザカの行方を聞き出そうとする。その隙を狙い清水が逃走、残った四人はスキー道具を装着、アルプスの山小屋へ。一方、荒木と杉井君は、スイス山岳救助隊に協力を要請。自分たちはセスナ機にて空から捜索開始。
 山小屋にてサエコは、非情な真相を知る――夫、キミオは生きていたのだ。
 黒焦げ死体の正体はイシザカで、キミオが自分の身代わりに殺害したのだ。キミオとサエコの衝突。「ヨーロッパじゅうの山を征服したかった」「ビジネスマンになるんじゃなかったの」「なれるわけがない、アルバイトして稼げというのか、山は俺の命だ」。キミオはジローに猟銃を突きつけ、念願の宝石を手にして喜ぶ。そこへ清水が現れ、揉みあううちにキミオが誤って発砲、階上に居たカナイを殺してしまう。清水たち優勢かと思いきや突然、ユミコがキミオに銃を渡して裏切る。ふたりは恋人同士で、キミオはサエコに追い討ちをかけるように罵る。「おれはお前みたいなしつこい女は大嫌いなんだ!」。
 小屋を出た悪党ふたりは、山を滑走し逃げるがその際、ユミコが崖から転落。自棄を起こしたキミオは、荒木と杉井君、救助隊に包囲され、行く手を塞がれても逃げ続けようとする。「雪崩が起きるぞ!」と荒木が警告しても「騙されるか!」と銃を乱射。ついに雪崩が発生、山を軽んじた山男は、跡形もなく雪に呑まれてしまう……てな話。