『ザ・ガードマン』第317話「恋人を殺して姉弟心中」

(脚本 増村保造 藤森明/監督 竹馬伸雄/出演 緑魔子 花沢徳衛 長谷川哲夫 川口恒 平泉征 田口計 仲村隆 森矢雄二/ナレーション 城達也)
 春。群馬県谷川岳では雪崩が起きやすくなっており、登山禁止地域もあるとの報道。
 歳若いがベテランの「カミカゼ登山家」カズオは、それを敢えて無視し、友人で自動車のセールスマン・オオカワとともに「衝立岩」に挑もうと決意。一方、カズオの姉トモコは、ミス「シントウ商事」と名高い、美人で働き者の経理課員。両親が亡くなった後、大学を卒業して社会人になるまで面倒をみた可愛い弟の安否を気遣っていた。
 トモコにはハナイという、同じ経理課に勤める婚約者が居た。彼とは長年のつきあいで、早く結婚したいと願うトモコの気持ちを見透かしたように、真珠のブローチをプレゼントする。喜びながらも弟の身を案じるトモコ。
 カズオは念願の「衝立岩」に挑戦。オオカワの忠告にも耳を貸さず、休憩もせず登ろうとして雪渓に転落、それがきっかけで起きた雪崩に巻きこまれ、行方不明に。
 不安が現実となりトモコは、急ぎ立川岳に駆けつけるが、「登山指導センター」主任の「捜索は一日しかできない」ということばに愕然とする。捜索を続行したければ「家族が救援隊の費用を負担しなければならない」「20人雇い一週間捜せば200万はかかる」。トモコは、なんとしても捻出すると断言。「シントウ商事」を警備していたガードマンたち、高倉キャップ、小森さん、清水、杉井君の四人も、トモコへの同情からボランティアで捜索に参加。
 トモコは恋人ハナイに「弟を大学に行かせるだけで精一杯、貯金なんてない」と愚痴る。ハナイも平社員に過ぎず、200万など到底出せない。トモコはサラ金を訪ねて回るがことごとく断られ、遂には経理課の常務に相談することに。常務は、交際費と称してバーなどで月に一千万もばらまき、豪遊しているような男で、ふだんからトモコに下心を持っていた。ここぞとばかりに「200万やるから抱かせろ」などと要求、無理やり身体を奪う。
 六日経ってもカズオは生死不明、行方知れず。主任は「ヘリコプターを使うしかない」と助言。が、東京から呼べば一日、300万はかかる。それでもトモコはヘリを雇い、捜索隊の人数を増やすと決断。早急に500万必要となる。
 ハナイはトモコに200万の出所を問い詰める。高利貸しから借りたと聞くと「きみの借金はぼくの借金」「結婚したら苦しめられるのは僕なんだ」と怒り出す。トモコは、あきらめきれず常務と会うが、金は出さないと断られる。ふたりの関係を知ったハナイは、「身体を売るなんて」「汚い」「こんな女に高価なブローチをやるなんて馬鹿だった」と憤怒をぶちまけ、トモコからブローチを奪い返す。
 傷心のトモコは、自分を愛しているというオオカワとともに強盗を企む。常務の部屋へ乗り込むとピストルで脅迫、「経理課の金庫から500万出せ」「ハナイから鍵を借りろ」と要求する。四人は夜間警備の榊さん、吉田さんに「経理の帳簿を調べたい」と嘘をつく。金庫を開け、大金を渡したとたん、ハナイはひとり逃げようとする。が、そこへトモコが立ちはだかる。「どけ、淫売婦!」と怒鳴るハナイを、トモコは、無表情で銃殺する。榊さんたちが駆けつけるが、トモコたちは常務を人質にとり車で逃走。本部待機の荒木が警察に通報するが、ふたりは非常線をなんなく突破。 
 翌朝、快晴の谷川岳に到着。主任に頼み、既に手配されていたヘリで捜索開始。放心状態のトモコをキャップが「きっと見つかる」と励ます。と、そこへヘリから、カズオを発見したという合図が……てな話。

・増村脚本となれば自然、映画『氷壁』を思い出す(1958年/監督 増村保造/脚本 新藤兼人)。とはいえ無論、単なる焼き直しではない。最も大きな相違は、カズオの生還だろう。
・第315話「危険な18歳の奥さん」もそうだけど、〈奇跡の生還〉という「エモ」い話は、どうにもこのドラマにはそぐわないように思う。ガードマンに感傷は似あわない。それよりも増村映画風のどろどろしたBGM、緑魔子の凍てつく情念演技に注目。
・にしても東パト社、キャップ含めた社員が四人も立川岳に約一週間滞在、しかも恐らく自腹きっての雪山捜索とは、余裕ありますなあ。