第315話「危険な18歳の奥さん」

(脚本 山浦弘靖/監督 国原俊明/制作所 大映京都撮影所/出演 酒井修 石井くに子 潮万太郎 金内吉男 中井啓輔)
工場勤めの若く貧しい夫婦のあいだに子供が産まれる。が、まだ遊びたい盛りの二人は、夜泣きや育児のための出費を負担に思うとともに、望みもせず産んだ子供に全く愛着を抱けない。ついには困窮の果てに、たちの悪い兄貴の誘いに乗り、工場から給料約六千万を盗み出す。夫婦は兄貴を裏切り、ガードマンの追跡を振りきって逃亡する。その際、道端に置かれた廃車のなかに、赤ん坊を棄て去ってしまう。杉井君が救出するものの、赤ん坊は急性肺炎に罹り、いまにも死にかけていた……てな話。

・「危険」なのは、夫婦ともどものはずだが、タイトルでは「奥さん」のみ指摘。
つうか70年、71年と合せて見ると、タイトルに「奥さん」とつく話が九本もある。なかでも最終回間近な、第347話「すごーい奥さんの飛行機爆破作戦」は、格別にハジけている。「黒い猫」「黒い微笑」といった白黒時代のミステリアスなものからまるきり隔絶した、その頓珍漢な開き直りっぷりが凄い。中身が気になってしゃあない。
・何話かは忘れたが、初期に杉井君が「自分の家は貧乏だった」と告白し、悩んでいる相手を慰めるというエピソードがあった。そのことを念頭におくと、杉井君の激しく真摯な怒りも、説得力が増すように思う。このドラマは長期連続ものとしては珍しく(?)、一貫して主人公たちの背景をほとんど描かないため、杉井君の唐突な告白に対し、違和感を含んだ驚きを覚えた。吉田さんの母親が出てきたときも同様。
・背景描写、それに付随する人間ドラマは、あくまでガードマンと対峙する相手側のためにある。決して過去のトラウマなどを引き摺らないことが、ガードマン――勧善懲悪劇において絶対的正義を体現すべきヒーローであると同時に、決して視聴者の期待を裏切らず、ときには説教じみた科白も代弁してくれる、犯罪に対して徹底的に冷静な観察者たらしめている、といえるのでしょう。