第142話「悪魔の爪あと」

(脚本 今村文人/監督 富本壮吉/出演 根上淳 吉村実子 村田知榮子 原泉 清水絋治 田口計
 「桑原産業株式会社」社長のもとへ、親戚のイシカワエミコと名乗る女性が訪ねて来る。そんなひとは知らない、と社長は接見を拒み、清水がその旨を伝えるがエミコは怯まず、今度は「イシカワカズコという女の件で来た」と伝えさせる。すると社長は血相を変え、直接会うのを許す。ふたりきりになるとエミコは「カズコは死んだ、わたしはあなたの娘だ」と衝撃告白。
 東京パトロール社本部。高倉キャップたちは社長から、突然現れた娘を自称する女の身元調査を依頼された。早速、清水たちが調べた結果――社長は20年前イシカワカズコと離婚した・原因は秘書課長のノグチと問題を起こしたためらしいが判然としない・そのときカズコはエミコを身篭っていた・社長とノグチ、どちらが父親か判らない・カズコは六歳の娘を残してハワイに住み、交通事故で死んだ――といった事実が判明。キャップは引き続きエミコの身辺を探るよう、清水たちに指示する。
 社長は自分の邸にエミコを迎え、カズコとの思い出話を語る。「多忙でかまってやれなかった」と口惜しみつつ、感慨深い口調で。それを聞いたエミコは、社長の子供になってお金が欲しいわけではない、育ての親である祖母が亡くなり、父親恋しさのあまり会いに来たのだと。社長は微笑み、甥のヒロユキにエミコを自分の娘だと紹介。ヒロユキは愕然とし、エミコを見つめる。
 キャップは社長に戸籍謄本を見せる。父親についての記載はないが、カズコとエミコが実の母子であることは間違いない。その帰り道キャップは、素行の悪そうな男と一緒にエミコが、顔を強張らせて歩く姿を目撃。男はエミコに「社長令嬢におさまるつもりか」「逃げきれると思うな」と冷淡なことばを浴びせる。
 病院で血液型検査を受けた結果、社長とエミコは、血の繋がりがないことが明らかに。「わたしがいけなかったんです」と泣くエミコ。不憫に思った社長は「君を手離さない」「うちで働いてもらう」と断言。エミコは社長に抱きつく。その晩、自室に鍵をかけ一人になると、笑うような、怒ったような曖昧な表情を浮かべる。
 翌日、エミコが「旅荘円山」の一室に入ると、ベッドに寝転がっていた中年女が飛び起き、馴れ馴れしげに喋りかける。女は、エミコの実の母親、イシカワカズコであった。エミコはタケウチに事情を嗅ぎつけられ、100〜200万出せと脅迫されたと説明。カズコは桑原家、そして社長の母親に恨みを抱いており、社長がエミコに手を出すよう謀ることで、その体面を潰すと同時に大金をせしめようと企んだのだ。
 社長主催のパーティを終えた後、エミコはヒロユキに強引に唇を奪われる。だが逆に誘惑、社長が自分に欲望し、いまにも襲いかかられんばかりのように仄めかす。社長には、ヒロユキが無理やりキスしてきたと告げ口する。
 エミコは車で外出する社長を見送るが、タケウチが監視していると知って動揺する。「都合をつけろ」と迫るのに対し、世田谷の夜の公園で待ち合わせ、金を差し出すよう求めてくる相手の胸めがけ、ナイフを突きたて殺害。
 高倉キャップは、新聞でタケウチの顔写真を見たとたん、どこかで見た顔だと訝しがる。ふいに、エミコと一緒に歩いていた男だと思い出す。確認のため写真を見せるが、エミコはシラをきる。
 邸に帰ってきた社長の母親だったが、すぐまた居を移すことを決意。「別れた妻の子供を引き取るなんて」「世間体を考えていない」と激怒、エミコを汚らわしいもののように睨みつける。
 エミコは社長と二人きりになると泣き出す。社長の母親から電話で「邸から出て行け」と命じられたのだ。そのまま自室に篭ったエミコの悲しみをほぐそうと社長は中に入り、抱擁し、懸命に慰める。が、翌朝、エミコは社長への感謝をしめした置き手紙を残し、姿を消した。
 本部。キャップは清水に「タケウチの身元がわれた」と告げる。タケウチは、売春関係の前科六犯という相当な悪党で、横浜でいかがわしい女のヒモをやっていたという。キャップは詳細を調べるため、清水を横浜に向かわせる。
 社長の母親は突然、甥のヒロユキの養子縁組を決めたという。だが社長は、エミコのことが心配で判断に迷う。そこへエミコから電話が。ふたりは夜十時、渋谷で待ち合わせ、ホテルへ直行。カズコの思惑通り、いつしか社長はエミコに惚れこみ、骨抜きにされていた。衣服を脱ぎ寝台に横たわると、桑原家やら社長の面子といったものなど一切どうでもいいというように、ただ「ぼくと一緒になってくれ」と愛撫を繰り返す。
 清水は横浜で、タケウチとカズコの過去を知る女たちに事情を聞く。そして、ハワイで死んだのは「メリー」という別の女であり、彼女が「ネイビー」相手に店をしていたカズコから20万で戸籍を買い取ったことなどを突き止める。
 宿に泊まる金もなくなり、痺れを切らしたカズコが邸に電話をかけてくる。直接かけてくるなと叱り付けた後、エミコは自分たちの会話を、二階に居るヒロユキに盗聴されたと知る。社長に真相を話すため電話のダイヤルを回しかけたヒロユキに対し、薬品をしみこませたハンカチで口を塞ぐ。次いでガスの元栓をあけ、戸を閉めきり、二人目の殺人を犯そうとする。そこへキャップと小森さんが現れ……てな話。